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創作物語 ThunderForce forever

第1話 新たな時代 - 時は巡り、新たな歴史が動き出す -

 遥か銀河、星が瞬く広大な宇宙。
 宇宙誕生より、繰り返されてきている生命の誕生と死。その永遠の流れの中に、自由意志をもった知的生命体があった。しかし、宇宙という無限の時間軸では、とても小さな変化でしかなかった。
 変化の収縮は、生きることの忘却に起するのだった。

 一部の知的生命体が宇宙時代に突入したとき、共存し合える無数の知的生命体が共同で「銀河連邦」という組織を生み出した。宇宙全体の秩序のもと組織され、このことを彼等は賛美した。そして、その誕生から900年近くが流れようとしている。
 だが、この長い歴史の中で、彼等は、巨大な敵と戦いに明け暮れることとなる。それは、隣接銀河「オーン恒星系」に存在する知的生命体「オーン帝国」の存在であった。彼等との戦いは、100年余り続いたのだ。
 この戦いの中で、幾度の激戦が繰り返された。そして、いくつもの英雄が生まれていった。その中でも、「ジーン・R・ファーン」、この戦いに終止符を打ったもっとも偉大な英雄である。彼の名を知らない者はいない。彼は、銀河連邦最後の切り札「Styx(スティクス)」と呼ばれる小型戦闘機を操り、見事、帝国を撃破した。この勇敢な戦いは、色あせず、未だ人々の心をとらえている。
 物語は、ここから始まる。

 銀河歴896年。銀河連邦は、自分達がレオ恒星系と呼ぶ惑星群に、籍を置き、自ら生み出した敵に苦しめられていた。たった4年前、オーン帝国残留部隊ヴィオスとの新たな死闘を、彼等は乗り切ったばかりであったが、敵は再び現れたのだった。それは皮肉にも、銀河連邦そのものだった。組織は2つに分かれ対立したのだ。
 分かれた組織の片割れに、英雄ジーンがいた。彼は、自分の母校にあたる連邦軍士官学校にて、自分の部隊に配属された新兵達に講義をしていた。講義内容は、軍事配備される小型戦闘機の実戦配備テスト。そして、たった今、この講義演習を終えたところだった。
 しかし、整備室で彼は、やり場の無い怒りを噛み締め、最後の弁を解かずに部屋を後にすることになる。
 彼を怒らせたのは、マサヤという新兵だった。演習中、仲間の編隊を崩してまで、上官であるジーンに食って掛かったのである。もちろん、ジーンが負けることはなかったが、正確には、彼のチームが勝ったのだ。
 整備室にロッカーがへこむ音が響きわたる。

 「大佐のStyxには、ついていけませんよ。」

 彼の部下からこぼれた言葉は、ジーンの不快感を結論づけていた。
 ジーンは、自分の乗る高機動戦闘機FireL.E.O Styxに不満を感じてやまなかった。それは、自分が乗るべきだった次期超高性能小型戦闘機FireL.E.O Rynex(ライネックス)が、闇に葬られたからだ。
 Styxは、「オーン帝星攻略戦」にて、オーン帝国を滅ぼし、ジーンと共に帰還。名実共に賞賛された機体となったが、Rynexは、終わったはずのオーン帝国二度の戦い「ヴィオス大戦」に導入された超高性能小型戦闘機であり、パイロットである連邦士官学校時代ジーンの親友「ロイ・S・マーキュリー」共に帰投することはなかったのだ。
 これを発端に、Rynexは、開発中止となっている。

 「ロイ。おまえはおいしい男だ。」

 ジーンは、Rynexのパイロットになることはなかった。
 Rynexの開発をあきらめた銀河連邦は、実戦データのあるStyxを主力戦闘機としてカスタマイズすることに決定していた。Rev.2といえば聞こえがいいが、オーン帝国無き現代、急激な戦力の増加は、反銀河連邦意識を育てるだけであり、よい味を出さない。こうして、Styxは量産化され、輝きは徐々に薄らいでいったのだ。

 「マサヤ、相変わらず大佐を怒らすのがうまい。」
 「単独行動もいいが、お前のせいで死ぬのはごめんだからな。」

 マサヤは、周りの同期とはちょっと変わっていた。彼等に罵られるものの、マサヤは黙って汗が冷えるのを待っていた。

 「大佐。自分はジーン大佐の英雄機であるStyxに乗れて、光栄です…。」

 自信無し気に、マサヤつぶやいた。
 彼はシャワー室に足は向けた。宇宙でのシミュレーションは平衡感覚を鈍らせる。天井から流れ出てくる暖かいシャワーは、体を貫き、水の流れが上下感覚を取り戻させてくれる。
 極度の疲れは癒やされ、感覚が戻ってくる。
 マサヤは髪に滴る水滴を犬のように振り払い、大きく息を吸い込んだ。シャワーを止めると共に大量のため息を吐き出す。うるさい外野は消えていった。

 「今度は、いよいよ実戦になるのだろうか…。たしか、物資搬入の…。」

 彼は宇宙の浮いた感覚が苦手だった。そのためか、配属先は地上を望んでいた。しかし、新兵に地上勤務が回ってくるはずがなかった。たいていの新兵は、研修代わりに宇宙の外回りへ行かせれる。退屈な監視任務なのだ。そのことを、マサヤは嫌がったわけではないが、マサヤの強い希望は、上からの怒りを買う結果となった。
 そんな中、ジーンとの出会いはマサヤにとって救いであった。

 「ここのところ、俺どうかしているんだ。せっかくジーン大佐と仕事ができるというのに。」

 怒らせたことを悔やみつつ、自分の中に眠る不安と疑問を今日も押し込んだ。
 気づいたときは、もうベットの上だ。かのダライデイザー攻略戦の英雄エイドラの孫、ジーンとの出会いの興奮も、今や皺一つ無いシーツに吸収され、静かに冷めるのだった。

 「ほう…。」

 一人の男がそっとつぶやいた。ため息にも、喜びの声とも聞こえる言葉を出したこの男は、黒いサングラスをかけ、不思議な雰囲気を持っていた。

 「中尉がいなければ、こいつは意味がありません。」

 男の部下らしき人物が、言葉の後について補足した。男は苦笑し、真っ白にペイントされた物体に手をふれた。それは小型戦闘機であった。そして、その機体の周りには、同じような小型戦闘機がいくつか並んでいた。男はそれらを見回し、触れた手で機体をなめた。
 部下らしき人物は、続ける。

 「GUARDIANSが、密かに戦力増強を行なっているというのは本当ですか?、本当だとしたら、我々も…。」

 サングラスの男が振り向くと、足音が鳴り響き、言葉をかき消していく。

 「中尉はよせ…つらい。そういった身分じゃない。」

 そう言うと、少し笑いながらその戦闘機に乗り込んだ。懐かしい感覚が彼を襲う。同時に熱い感情がこみ上げた。
 彼の名は、「ロイ・S・マーキュリー」、今は「クズハ・M・キュレイ」と名乗っている。ロイは旧姓を捨て、クズハと名乗り、密かに先の大戦より帰還していたのだ。
 ロイは、部下の言いたいことも、理解していた。自分達を統率すべき組織の分裂は、日に日に濃くなっている。彼は、友人ジーンの所属する組織とは違う、分かれたもう一つの銀河連邦、反銀河連邦に所属していた。
 二人は、対立することになる。

 銀河歴892年、人類の強敵、オーン帝国は、ジーン、ロイらの活躍により消滅。その後、銀河連邦が人類を統一を行なった。しかし、人類統一という大儀の前に、勢力を拡大した銀河連邦は、銀河連邦軍事組織「GUARDIANS」 に飲み込まれ、その後、勢力を2つに分けた。GUARDIANSは、目に余るほどの軍事成長と各惑星の力による統率を行う。そして、オーン帝国のテクノロジを復活させての戦争「亡霊戦争」。
 かつての銀河連邦の姿は消え、人々は、新たな驚異を実感しはじめた。
 人々はこの驚異に対抗すべく、残された銀河連邦組織と共に、反銀河連邦勢力「S.O.L」を誕生させた。だが、S.O.Lは、形こそ反銀河連邦体制をとったものの、力を持たな組織にすぎなかった。

 「私にできるのか?…。」

 ロイは、この成長を続ける力に対し、力で対抗することをS.O.Lに強く求められ、反銀河連邦の積極的な軍事介入、先手を打つ作戦を提案した。

 「力を力で対抗することは、愚かなことだ。」

 ロイはわかっていた。しかし、時代は彼の力を必要とした。

 「今回の作戦は、GUARDIANSの軍備奪取である。戦闘が目的ではない。各自、状況に応じて、判断してくれ。」

 宇宙空間に数機のシルエットが弧を描く。
 それは、新たな時代の幕開けとなった。

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