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創作物語 ThunderForce forever

第2話 ロイとキャロル  -人と人との戦争が時を刻む -

 元銀河連邦がオーン帝国との大戦を強いられていた時代、人々は恒星間巡航船によって星々を渡っていた。この巡航船が必要とした時間は、連邦基準時間にして数日から数週間とされていた。
 オーン帝国滅亡後、オーンの残した傷跡は癒えきらず、宇宙を漂った。だが、その力は人々の生活を変えていくことになる。 それは巨大な移動装置と姿を変え、悪しきオーンのイメージ変貌させた。しかし、不幸にも、それは新たな戦争を生む要因となる。
 オーンの生み落とした子たちは、確実に成長し、人々を犯していった。

 銀河歴894年、オーン帝国が滅び、ロイ・S・マーキュリーが行方不明になってから2年後のことである。 銀河連邦は、惑星間航行をオーン帝国の名残「ケルベロス」に新たな兆しを試みた。通常空間と亜空間を航行可能とするこのシステムは、惑星間航行簡略化に成功する。
 多くの人はこれを賛美した。そして、ほとんどの惑星に、このシステム配備を願った。銀河連邦はそれに応えるべく、クローン・ケルベロスとして複製し、配備を急いだ。人々の生活にすぐにとけ込み、無くてならないものとなっていった。
 だが、銀河連邦は何の理由もなく、システムの使用を規制。人々は戸惑い、混乱した。自由な時間を突然取り上げられたとき、どんな気持ちになるだろうか?、規制は惑星間に貧富の差を生み出し、心の隔たりを造ることとなる。
 はじめは抗議活動のようなものだった。人々の混乱は具体化され、紛争を呼んだ。各惑星は、銀河連邦に抗議を行ったが、返答は無く沈黙し、規制を続けた。
 そんな緊張の高まる中、悪夢が起こる。システムが人類を攻撃したのである。それは、銀河連邦への抗議集会、システムの解放を願う一集会の行われた惑星セイレーンで確認された。風の噂に、オーン帝国の復活とささやかれた。
 これをきっかけに、反銀河連邦を唱える組織は具体化し、銀河連邦との衝突は武力抗争へ突入した。
 亡霊戦争。このことをこう呼んでいる。
 しかし、システムの攻撃は、暴走によるものなのか、故意に行なわれた物なのか、人々は知らない。

 その後、銀河連邦の監視のもと、システムは入念な検査が行なわれ、継続、稼働することが決定した。そして、銀河連邦は惑星間の紛争、暴動を避けるべく、オリジナル及びクローン・ケルベロス・システムに、オーン帝国が当時行なっていた無人防衛システムを復活させていることを発表。同時に、その権利を各惑星管理配下に納めた。オリジナル・ケルベロス・システムは、3つのコントロールパネルにより制御を行うこととし、各派閥勢力へ分散した。
 銀河歴896年。現在、銀河連邦2大勢力であるGUARDIANSとS.O.L、そして、ライト恒星のアクエリア自治体が、それぞれシステムの管理を行なっており、各惑星統率も分けられる。また、どちらにも属すことの無い中立を唱える惑星も存在した。
 各惑星間に配備されたクローン・ケルベロス・システムにより、大型戦艦や大型質量兵器による大規模な惑星間紛争は避けられた。そのかわり、ケルベロス・システムに干渉しない、小型の戦闘機「L.E.O(Little.Eternal-Operation)」が戦争の優劣を決めた。小規模な小競り合いが頻繁になり、各勢力の緊張は高まっていた。

 宇宙空間には、謎の高エネルギー粒子が存在しており、以前から研究が成されていた。このエネルギー粒子は、素子の発見、応用に成功した人物「ライプニッツ・クロー博士」にちなんで「CLAW」と呼ばれている。過去のオーン帝国との大戦時 に、CLAWが銀河連邦に勝利の兆しを与えたと行っても過言ではない。小型の戦闘機の長距離航行を可能にし、超兵器を生み出させた。
 CLAWは、光子の影響が受けやすく、むらができるという欠点がある。海の潮のような流れである。宇宙をうまく浮遊するとき、この流れと、CLAWをうまく使うことが鍵となっていた。
 ロイはCLAWの流れを感性で読むことができた。このセンスは、周りの人間との戦闘センスの差をつくった。計測機器が発展し、流れの予測が可能となった時代だったが、一瞬の隙も許されない戦闘状態での感覚は、機械も勝ることはなかったのだ。
 ロイの目の前にあるディスプレイには、CLAW流の観測結果と予測が刻々と映し出されている。彼は、星の輝く宇宙を見つめ、時折それに目をやった。

 「この空間のCLAWレベルは高い、だが、このときを逃すとヒュードラにはたどり着けないぞ。」
 「了解であります。」

 ロイは迷っていた。宇宙の迷子というわけではなく「この戦争の引き金にはなるべきではない」ということだ。 力で対抗するよう進めたのはロイ自身だった。だが、この戦争で多くの人を傷つけることになる。これは辛いのであった。
 ロイは、操縦パネルを横目にスティックを引く。自分に与えられた新しい機体は、素早く反応し加速する。それは、まるで宇宙空間に飲み込まれるように飛び、「キャロル・T・マース」と呼ばれる女性の名前を思い出すのだった。

 数ヶ月前のことである、ロイはキャロルに頭を下げに行った。S.O.L戦力を増強させるためだ。彼女は、先のヴィオス大戦にてロイとRynex技術者として搭乗し、彼同様、行方不明になっていた。しかし、彼が生きているように、彼女もまた生きている。
 彼女は、亡霊戦争以来ロイを嫌い、交流を避けていた。
 キャロルは帰還後、GUARDIANSの兵器工場に紛れていた。表向きには、貧困惑星への設備援助団体であったが、GUARDIANSの出資する兵器企業体の1つであった。S.O.Lの潜入社員というわけではなく、一人の女性として彼女はその仕事を気に入っていた。

 「戦争は嫌い。ロイ、あの人も嫌い。GUARDIANSはもっと嫌い。」

 彼女の口癖だ。だが、次の一言がもっとも彼女らしい、

 「だけど、私は見たい、まだ足りない…だから、そんなこと、どうでもいい。」

 人が何行動を起こすとき、その理由を考える人はいない。仮に、何かに自分を投影し、行動に理論づけるのなら、キャロルの行動も一理ある。なりふり構わないキャロルの生き方、ロイは、そんなキャロルを否定はしなかった。
 ロイは、キャロルの前で頭を深々と下げていた。

 「たのむ。」

 キャロルは彼の言葉に耳を貸そうとはしない。彼女は戦争を嫌うが、ロイにも同じ想いがあるのことを、 彼女は忘れているようだった。

 「あなたをそこまで駆り立てるものはなに?。」

 ロイは頭を下げたままだ。

 「変わったの?それとも何か見つかったの?。」

 言葉は、学生がレポートを読み上げるように無機質な物だった。彼女は髪の毛に手をやり、額に皺をつくった。あきれている。旧友とは俗世間の代名詞だ、そんな物を当てされても困る。彼女の無機質さは、頭と体を反転させ、ロイに背中を見せた。いつまでもそうしていればいい。そう思っていた。

 「今は言えない。私に興味があるのなら、そう言えばいい。」

 ロイは頭を下げたまま、そう言った。

 「君にしか頼めないことだ。」

 続けて発せられた言葉に反応したのか、キャロルは肩を軽く弾ませると、振り返り、静かにロイにカードキーを渡した。

 「あなたの望みには遠いかもしれないけど、私の望みには近いことは確かみたいね。」
 「なにがいいたい?」

 ロイはようやく頭を上げ、キャロルと対面する。少し間があり、お互い見つめ合う。ロイは不思議な顔つきをし、彼女はわがままを許すように微笑むと、

 「興味があるなら、このキーの番号まで来て。続きはそこからね。」

 ロイは、そのカードが第4格納庫へのキーということに気がついていた。

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