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創作物語 ThunderForce forever

第3話 キャロルの決意  -人の決意が可能性を生み出す -

 ロイは、昼食を済ますと、彼女との待ち合わせの、倉庫に足を運ぶ、まだ戦争は始まっていない。静かな食事だった。暖かい光の射し込むテラス、周りの職員の笑い声と静かな風の音色。
 胸に「GUEST」のネームプレートをあるのを確認し、カードをポケットから取り出す。重い扉は低い音と共に開かれた。

 「食事の後にこの雰囲気、なじめんな。」

 声が部屋に響く、上を見上げると薄い光が地下深いことを教えてくれる。四角い通路のようになっており、ロイは通路の手すりに両手をおくと、下をのぞき込む。吹き抜けに出たみたいだ。倉庫にしては縦の空間がありすぎる。

 「あなたには、こっちの世界が似合っているわよ。」

 キャロルの声だ。階段を下りてくる音が響き、ロイのそばにそっと寄ると左手をつかむ。
 ロイはキャロルを見ることなく、黒い空間を見つめている。今更、男と女を演出するのだろうか。遅すぎる。ロイの気持ちは、サングラス越しの顔に現われ、キャロルを笑わせる。

 「お久しぶり。あなたの世界と私の世界が共存するときは、いいでしょう?。」

 先ほどの取引とはうって変わり、優しい表情と甘い声が聞こえる。
 ロイはサングラスを右手に持ち、部屋の照明をつけるように彼女に言う。せっかくの雰囲気が壊されたとキャロルは感じたが、彼女は雰囲気を変えないまま、スイッチを入れた。
 そして、足下が動き出す。

 「前に一度、ここに来たことがあった。…が、ずいぶんと変わったかな。」
 「当たり前でしょ?、いつのことをいっているの。」

 吹き抜けのような暗い倉庫。ますます暗くなっていく。足下を照らす照明もあまり意味がない。どうやら下に降りているようだ。モーターのギアが停止する音がし、手すりを握る力が増す。エレベーターのスイッチの隣にあるスイッチが入ると、部屋の一角にスポットがおろされる。その光の中には、汚れた戦闘機らしき物が見えた。二人はそれに近づき見上げる。

 「新型、いや違う……。まだこだわっているのか…キャロル。」
 「数年前…拾った時からね…。」

 機体は白く、所々青のペイントがされていた。懐かしい記憶が蘇る。
 機体に手を触れると小刻みな振動が手と体を襲う。瞳孔が開き、背筋に鳥肌が立つ。額に汗をにじませると、機体の存在感が彼を襲った。その鼓動がロイをそうさせたのか、彼は硬直していた。

 「さわるな!。」

 スポットの当たらない暗い空間の奥の方から、女性のような甲高い声が聞こえた。
 声の主は、スポットのカーテンをくぐり、ロイの前に現われる。冷たい目と白い髪をした女性は、髪の色と同じ白いマントを身を包み、所々見えるフィットした黒いスーツは、体のラインを象徴していた。
 全身から静かな冷気を放ち、ロイを威圧するかのように見つめた。だが、彼女は彼を理解したのか、彼を見つめる目は、キャロルの方に変更され、体を向ける。キャロルは、すまなそうに彼女と少し会話を交わしている。ロイはサングラスを再びかけ、天井を見つめた。
 戦争を嫌う物が集まり、戦争を生み出す物を造る光景。彼の頭に巡る思いは複雑に絡み始めた。

 先ほどとは変わり、昼食をとったあの明るいテラスにいる。地下であった彼女もいた。太陽のもとで見ると白い髪はさらに白さを増し、銀色となっていた。
 一人の少女が、ロイ達にコーヒーを運んだ。キャロルは、少女に軽くほほえみ、少女は答えるように一礼する。キャロルは彼女に気づき髪をかきあげながら振り向いた。

 「あ…ごめん、イスが足りないわね。」
 「いえ、平気です。」

 少女は隣のテーブルにあったイスに手をやり腰をかけた。キャロルはコーヒーをカップに手をのばす。少女が、膝の上と顎の下にお盆を挟み込んだとき、銀色の女性は口を開いた。

 「今度は止められるのか?。あれはかまわない、好きにするがいい。」

 そして、そのことに呼応してロイも口を開いた、

 「私は、まだ理解していない。それに、私は技術者ではないよ。」
 「そうかな?…ならば、そうすればよい。」

 銀色の髪の女性は、すうっと立ち上がりその場を後にした。ロイは、彼女に何かを見透かされているのだと感じた。
 彼の目はコーヒーカップの底を見ている。テーブルに漂うコーヒーの香りに心を落ち着かせたのか、彼は目を閉じ、

 「コーヒーの数が、3つ…。」

 ロイは立ち上がり、

 「キャロル、期待している。」

 そういうと席を後にした。
 残された場を不思議そうに観察する少女は、キャロルのあきれたいつもの表情にほっとし、後かたづけを始める。

 「クズハさん…、人が変わったみたいですね…。」

 少女は少し彼を心にかけたようだったが、その言葉は、キャロルに届いていなかった。

 キャロルは、開発室に戻る。同士と先ほどの少女が出迎えた。部屋では、ロイが持ってきた手紙と作戦案が公開されていた。S.O.Lの完全な軍事参加と、GUARDIANSとの全面戦争への宣言であった。
 そして、キャロルもまた、S.O.Lへの協力を理解した。

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