TF

創作物語 ThunderForce forever

第5話 輝くもう一つのシルエット  -開発コードSyrinx -

 「なんだと!?。」

 すでに自分の機体姿勢を維持できなくなったジーンは、落ちていく新型小型戦闘機に目をやるしかできなかった。
 ロイの放ったFREE-WAYは、ジーンの部下を撃破し、ジーンの機体に致命的なダメージを与えた。あまりにも一瞬の出来事に、ジーンは混乱気味だったが、大戦をくぐり抜けてきた力が、状況を把握する余裕を生んだ。

 「あの白奴…。」

 そのシルエットに、彼は、瓶に押し込まれるような不快感が全身を駆け抜け、大量の汗を発散させる。冷静さを失っていった。自機のコンソールを叩きつける。

 「ダイダロス・コーポレーション!聞こえるか!! 今のはなんだ!?。」
 「当社では、すでに引き渡しは終了しております。以後の対処はそちら側の責任にありますので…。」

 通信はとぎれた。いや、ジーンが切ったのだ。野生のような声を上げると、狂ったように操縦桿を握りしめた。だが、今の姿勢を維持することですらままならない機体を、動かせるわけがなかった。
 開発コード「Fire L.E.O Syrinx(シュリンクス)」。ダイダロス・コーポレーションが密かに開発を行なっていた「次期主力・超高性能小型戦闘機=Fire L.E.O 5」のプロトタイプである。Rynex-Projectをベースに、主に高出力の攻撃兵器を装備できるよう開発された。また、重装備による機体の重量化に伴い、材質の軽量化と機体変形による機動性が向上されており、まさに次世代機であった。
 しかし、ロイの一撃で宙を舞ったSyrinxは、コントロールを失い、大地の谷間に消えていったのである。

 「…ほう、なかなかやる。」

 ロイは落ちるSyrinxのパイロットをほめていた。操縦桿を軽くひねり、その機体の流れる方へと、Rynexを向けた。
 上空の戦闘は、煙を吐いた機体から出された休戦信号により、部隊はこの場より撤退を開始を始めた。ロイはそんな状況を確認することもなく、命令を下した。

 「ストール、ブライ。おまえ達も新型の確保に回れ。」

 自分の部下を呼ぶと、ふわりと宙を浮いた機体に風を与え、加速させた。
 戦いの中、彼は、致命傷を与え、撤退を余儀なくさせた機体Styxに、戦友ジーンが搭乗していたなど、気づくことはなかった。

 頭がひどく痛い。彼は、生きていることの喜びよりは、まず、その痛みから解放されたかった。強制脱出を作動させ、無理矢理外に出たのは、マサヤである。マサヤの機体はぼろぼろになりながらも、森の木々がクッションになり、死を免れたのだ。しかし、次の瞬間、爆風と高熱に襲われ、彼の乗っていた機体は跡形もなく飛び散った。
 マサヤは帰投する手段を失ったのである。

 「だめだ、痛い!。」

 ヘルメットを脱ぎ捨て、額に手をやる。

 「うっ…どうりで…。」

 その赤い手のひらを眺めながら、彼は落ち着きをとり戻し、それ以上の詮索をやめた。
 そして、ゆっくりと腰を大地に下ろした。もう助からない。そう思えたからかもしれない。はたまた、死を覚悟した割には、生きている事実にあきれたのかもしれない。どちらにせよ、もうどうでもよいこととなっていた。
 辺りの爆風と爆音は、耳鳴りのように消えている。マサヤは、静かな森の香りに気がつき、地面に仰向けになると、大の字に空を見つめた。

 「…ついてない…かぁ。」

 休息もつかの間、大空は彼を戦場へと引き戻した。
 轟音と共に、一機のL.E.Oがよぎった。いや、あれは落ちている。とっさに飛び起きたマサヤは、まだ勢いの収まらないその行き先に目をやった。L.E.Oは、木をなぎ倒しながら、自ら止まろうとしている。

 「う、うまい。」

 何よりも初めに出た言葉だ。その鮮やかな着陸劇に目を丸くしたマサヤは、自然とそのL.E.Oに足を向けていた。見たことのない機体、Syrinxである。マサヤはそんなことを知る由もなく、ただただ、森を駆け抜けていった。

 「パイロットは、大丈夫だろうか?。」

 彼の頭は、そのことでいっぱいになっていた。コックピットに駆け寄ると、中をこじ開けようと試みる。だがそのとき、外部スピーカーから声が発せられた。

 「さわらないで!。」

 少しおびえているような声だった。マサヤには、そう聞こえた。

 「大丈夫なのか!?おい!!。」

 彼は必死で声を求めた。大丈夫だから…という声と共に、コックピットハッチはゆっくりと開かれた。
 中からでてきたのは、自分くらいの女の子。少女は体が震えていたが、ゆっくりと彼をにらみながら立ち上がり、一気に銃を突き付けた。

 「…!。」

 マサヤは声がでなかった。その光景に我を忘れ、どう反応をしてよいのかわからず、ただ立ちつくす。彼は、少女の銃を目の前にして、はじめて自分の愚かさと、敵同士であることを理解するのだった。

Copyright©2000-. Garow,Rights reserved. 無断転載、二次加工厳禁