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創作物語 ThunderForce forever

第6話 Syrinx奪取作戦(前編)  -戦いが人の歴史を刻む -

 マサヤは成すがままに両手に手錠かけられ、Syrinxの補助席に座っていた。機体に再び火が入り、上昇開始するSyrinxと、他の仲間と思われる機体達。その挙動に身を揺さぶられているマサヤは、戦場で、戦いを忘れた敗者であった。

 「僕は…どうすればいいんだ。」

 前面のスクリーンに大地が広がり、死んでいたはずの自分の居場所から十分に遠ざかる。Syrinxは変型をした。
 Syrinxはジーンの物になるはずだった。だが、ロイとキャロルの作戦により、こうしてロイの手に委ねられたのだ。

 「これから、大気圏離脱用ブースターを受け取り、バフラヴィッシュと合流する。ダイダロスとの受け渡しポイントへ向かうぞ。」
 「了解であります。」

 少し間があり、部隊隊長らしい声がこの機体に向けて発せられた。その声にマサヤは、ジーンの姿を重ねるのだった。

 「Syrinxのパイロット。エレン、ついて来れるな。」
 「は、はい。」

 Syrinxを操縦している彼女は、緊張をしているのか、まだ声が震えていた。
 みんな戦争をしている…マサヤは、取り残されたようにうつむくしかできなかった。そして、手錠をかけられるときの会話を思い出すのだった。

 「これは、戦争だ。が、君のような若者を、こんなところで死なすわけにはいかない…君には捕虜になってもらう。」
 「敵とはいえ、傷の手当てはしてあげます。抵抗はしないで下さい。」

 白い機体に乗る男は、サングラスをかけており、ジーンのような高貴威圧感はなかった。マサヤには一人の戦士のように見えた。正直言って、かっこよかったのだ。部下への配慮と行動の的確さ、会って分かりあったわけでもないのに、彼は、ロイにジーンとは違う好意を感じてしまった。

 「あのときの感覚、嫌いじゃない…。」

 自分を納得させる理由が見つけ、マサヤは苦笑した。
 マサヤの座る場所から、エレンは見えない。補助席とは言え操縦席の後ろに位置し、逆を向いているのだ。マサヤは、軽く振り向き、モニタに反射して移る彼女の顔を見た。彼女はきつく一点を見つめ、かたい表情のままだった。そんな彼女に、自分の声は届くことはないと感じたが、言わずにいられなかった。

 「傷、痛みが引きました。ありがとうございました。」

 「態勢を立て直せ、出られる者は私に続け!!。」

 GUARDIANSの戦艦ファフニールは慌ただしく、出撃の準備をくり返していた。S.O.L追撃部隊の指揮をとっているのは、ジーンである。GUARDIANS主力部隊の一角であるジーンは、追撃部隊の素早く編成し、態勢を立て直した。
 彼は、いつもの冷静さを取り戻し、

 「この事態は、S.O.Lの宣戦布告である。我々は、すみやかに世界の均衡をもとに戻すと言う高貴なる指名の元にある。彼奴らに戦力を与えるようなことは、断じて許されない。今作戦は、これを阻止するものとする。みな、全力で戦ってほしい。以上。」

 そう言うと、Styx-Rev2の部隊が、一斉に飛び立った。それと同時に、彼等の艦隊はダイダロス・コーポレーションへと向いた。制裁を加えるためである。

 操縦桿を握るジーンの手は、熱く必要異常に力が込められていた。

 ロイ達は、ダイダロス・コーポレーションの別働隊を合流し、大気圏離脱用ブースターを各機体に取り付けていた。ロイのRynex-custom、ストールの機体が取り付け終了したときである。待機中のブライから無線が入った。ロイはコックピットから出て作業の指示と自ら母艦「バフラヴィッシュ」の位置を確認していた。

 「中尉!GUARDIANSの追撃隊がこちらに向かっている模様です!。」
 「…そうか、意外と早いな。ブライと私が出る、ストールはエレンを援護しつつ離脱しろ。」

 ロイはそう言うと、ブースターの取り付けをしている作業員にはずすよう命令した。

 「だめです。今回の作戦は、S.O.Lの力を示すことにあります。それに、クズハ中尉だけは、絶対に戻せとの上からの命令です。」
 「しかしだ、私は…。」

 彼が言いかけた時であった、ブライと共に上空で待機をしていたエレンが声を上げた。

 「わ、わたし、が行きます!ブライ少尉も艦に戻って下さい!!、このSyrinxは、敵味方識別信号が、まだGUARDIANSのままです。敵も油断します!…それに、この機体はブースターがなくとも大気圏離脱可能です!。」

 瞬時に変型をしたSyrinxは、一気に空の彼方へと消えていった。あまりの一瞬の出来事に、ロイらは対処に追われた。

 「私が追い掛けます。中尉はバフラヴィッシュに戻って下さい!」
 「無駄だ、ブライ。…彼女のことは知っている。大丈夫だ、任せよう。」

 ロイは、静かにそう言うと、ヘルメットのバイザーを上げ、サングラスを取る。日差しが視界を遮る。彼はそのまま空を睨んだ。

 「合流ポイントへ急ぐぞ、ダイダロス。今作戦の協力、感謝する。」
 「いえ、中尉こそがんばってください。キャロル氏に、伝言ありますか?」

 サングラスを再びかけると、まさかの一言に少し戸惑い、苦笑する。

 「今は、生きていてくれればいい、それだけだ。」
 「了解しました。」
 「作業終了です。カウントダウンは継続中!」

 別の作業員の声がし、ロイは男に合図をおくると、3つに開閉していたRynexのコックピットは、静かに閉じた。

 「我々も、生きて帰らなければならない…まだ、始まったばかりなのだからな。」

 自分の気持ちを落ち着かせると、カウントダウンを寝耳に、目をつぶった。

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