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創作物語 ThunderForce forever

第9話 決別 - 選ばなければならない道 -

 銀河連邦軍はオーン帝国との戦いを終え二度とこのような惨劇を繰り返さんとし、各惑星間の管理、 監視体制を強化した。人々の中より潜むオーン帝国の驚異を取り除くべく、銀河連邦は独立機関「GUARDIANS」を発足、以後、彼らにより主立った銀河連邦の動きを見ることになる。もちろん、彼等により、惑星間航行は規制されいった。
 銀河連邦別同部隊GUARDIANSの発足の裏には、もう一つ目的があった。それは、オーン帝国誕生の謎を解明するものでだった。長い戦いにより、その生まれ、生態系、目的など、詳しいことはわかっていない。多くの人々は、外惑星、星系からの侵略者というイメージを持っており、時として、人なるものから生まれた可能性を感じ始めた。

 「GUARDIANSがオーン帝国誕生の歴史を追っていくという、もう一つの仕事を君に一任してあったが、その件でだ。」

 「わかっております。」

 「まず、外惑星からの物体調査だが…、オーンの手がかりだと思ったからこそ回収したが、 あれのレプリカを造れとは言っていないぞ。」
 「例のチップも存在しなかったようだ。ひとまずは安心だな。しかし…。」
 「そうだ。しかし、レプリカの回収及び調査の失敗、ダイダロス・コーポレーションへの制裁も失敗。」
 「よく戻って来れたというものだ。」
 「戦争屋に振り回されてどうする、我々は、もっと高貴な使命があるのだ。」

 「はい、しかし、…長い戦いが終わった今日、それがオーン帝国を生むきっかけとなったことを証明することは できません。」

 「『ヴィオス』という言葉を見ぬ振りはできまい。」
 「我々よる統一の成された元年に存在したこの意味は無視できんぞ。」
 「なんのために各惑星に配備された惑星間航行システムを凍結させたんだか。」
 「この過去のシステムが、発展し人類に対しての反逆行為を取ったといってもおかしくは無いだろう。オーンを生み出したというものだ。」
 「仮にだ、あの戦闘兵器とそのレプリカがS.O.Lの手によりオーンを…。」

 「それは軽率です。」

 「もういい、君には戦場へ出てもらうしかないな。」
 「追撃の指揮を勝手に取った後始末は、ちゃんとつけるのだよ。」

 「…了解であります。」

 「そのための用意はした。S.O.Lに肩入れすること彼奴らの無意味さを教えなければならない。」

 静かにトビラが開き、一人の男はその場を後にする。冷たい足音が通路に響き渡った。トビラは再び閉じられる。

 「できれば、レプリカ、例のL.E.Oも回収したいところだな。」
 「ダイダロスに任せたのがいけなかったと言える。」
 「キャロルのやつめ…Rynex-Projectの成功があったからこそ、身分を隠すことを許したが…。」
 「過ぎたことはもうよい。我々は次の世代を考えなければならない。」
 「そうだな。利用できるものは利用しようではないか。」
 「完全なる平和と調和を目指して…。」

 「老人どもが…。シェリー、私は、ただ、ロイのことが気になるだけなのだ。生きているのか…ロイ。」

 通路になにか叩き付けるような音が響く。

 「お前のカタキはとる…オーンの、……オーンの殲滅だ…!。」

 一人の男は悲しいまでに憎しみに包まれていた。

 ロイは艦長室の前で扉にノックをした。しばらくの沈黙の後、ドアが開かれる。

 「遅くなりました。」
 「クズハ中尉、待っていたぞ。」

 艦長の横に座るのは、反銀河連邦を唱えるS.O.Lの准将「ハミエル・A・ジュピター」である。宇宙空間にもかかわらずの軽装振りが、印象に残る。「人はいつか死ぬものだ、死を考えて生きているわけではない。」、彼は口癖に言っている。
 2人の大人の前には、小さくなって座るマサヤがいた。マサヤはうつむき、ロイが入ってきたことを意識しない。

 「マサヤくん、君は、GUARDIANSにもどるかね?。」
 「我々は、戦争屋では無い。ましてや、今は人間同士の戦いだ。捕虜への扱いも、決まりごとも無い。」

 オーンとの戦いが200年もの間行われていたがため、人間同士の戦争意識はほとんどなかった。この戦争は、人という形を。再び定義することになる。もちろん、人が人を定めるのだが。
 ハミエルは、マサヤからGUARDIANSの情報を聞き出そうと言うわけでは無かった。ただ、彼の意志をハッキリとさせたかったのだ。

 「若者が、無駄に命を捨てることは無い。」

 ロイは、そういいながら、マサヤの斜前の座席に手をやり、もたれる。

 「僕は、死にたくない。だから、GUARDIANSもS.O.Lも関係ないです。戦争は恐いです。こんな戦争、意味あるんですか?…、しばらく放っておいては、くれませんか…。」

 ロイは手をかけたソファーに力が入った。少なくとも、ロイはマサヤの気持ちを理解できた。ロイ自身、生きるための戦いをやったことが無い。憧れと勢い。前ヴィオス大戦において、パイロットに選抜された感動すら覚えている。若さ故にとも言えるが、彼は常に自分の戦いだけをしていた。
 銀河連邦やオーンでは無く、ロイは、自分の世界でしかなった。戦うことで、己の精神を研ぎ澄ます、生きる快楽に身を投じていた。戦いに意味を見出せず、ただ逃げていただけなのかもしれない。過去から現在、自分のあり方をマサヤから感じ取っていた。
 そんなロイを理解していたのは、キャロルだけだった。彼女は、彼を助けてあげたいと望んでいた。しかし、それは愛情として伝わらなかった。伝わらなければ、意味のない邪魔な感覚、行為となる。屈折した感情が彼等をバラバラにした。

 「何か見つかったの?。」

 キャロルの言葉がロイの頭に浮かんだ。手の力を抜き、サングラスの奥にある目を静かに閉じる。そして、「何も無い。今はそれでいい。」ロイはそう自分に言い聞かせ、気を落ち着かせた。彼の仕種は誰の目にも留まらなかった。
 ハミエルはカップにつがれたコーヒーを手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。マサヤを見て言った。

 「マサヤくん。やらなければならないことはすべての人に存在する。…それが、運命により与えられ強制されるものなのか、己自身が見つけだすものなのかの違いだ。また、個では無く、全体を通して変えられると言うことも、忘れてはいけない。」
 「運命なんて信じるなと…そう言いたいのですね。」
 「そうだ、己で作るのだよ。」

 沈黙が訪れた、マサヤはうつむいたままだ。

 「僕は、自分のことさえしっかりと意志がない。そんな僕に、運命を作れなんて…。」

 誰もが黙っていた。マサヤの口は開いたままだったからだ。

 「…それに、一度は死を受け入れました。生死をさまよいもしました。助けもなかった…この戦争は、人をよりよくする、守る為の戦争だって誰かが言ってました。誰もが誰かの助けを甘んじてるだけなんですよ。僕が、みんなにしなきゃいけないことも、運命を変えることも、あるわけないでしょ!。」
 「では、なんのために、GUARDIANSに入った?。」
 「こうなることは十分承知なはずだったのではないのか…戦争、軍隊とは時折、人命の重さを忘れる物だ。」

 ハミエルと艦長はもたれかかったソファーから身を乗り出して、彼の言葉を待った。マサヤは うつむいた頭をさらに下げ、手には力が入りだした。答えられない彼の姿をロイは見つめる。
 緊張の空間が壊される瞬間がきた。艦内放送が鳴り響く、

 「敵影をキャッチ、数機のL.E.O.がこちらに接近中!、くりかえす、敵影をキャッチ…。」

 続いて、部屋のインフォメーションパネルから呼び出し音が流れる。ロイはその受話器を手に取ると、口を開いた。

 「クズハだ、どうした?。」
 「あ、中尉!すみません、Syrinxにエレンが乗ろうとしています!。むちゃですよ、病人に!止めさせてください。」
 「わかった。今行く。」

 その会話は、部屋にも流れた。マサヤは、エレンと言う単語に反応し、目を覚したように顔を上げてモニターを見つめた。くやしいのだろうか、自分ではどうしていいのか分からない様子は変わらないようだった。
 ロイが受話器を置き、艦長達は立ち上がる。

 「我々もブリッジに行こう。」
 「私が出ます。」
 「よろしく頼む。中尉。」

 部屋のスクリーンには格納庫からの映像が写し出されていた。そこには、エレンが果敢にもSyrinxに乗り込もうとしている場面だった。周りの作業員は彼女を取り押さえている。
 マサヤは、再びうつむく。ロイは部屋の扉が開くと、振り向きざまにマサヤに言った。

 「彼女も戦おうとしている、戦場で希望を見つけることもできる。我々は今の君を助けることは、できない…。…後は君次第だ。」

 マサヤは悔しかった。何でここにいるか、自分が何者なのか、なぜ生きているのか…。

 L.E.Oの格納庫。

 何人かの作業員がエレンを取り押さえる中、彼女はコックピットハッチに取り付こうと声を上げていた。

 「大丈夫です。やらせてください!。Syrinxは慣れています。」
 「むちゃだ!、病み上がりが何をするんだ。クズハ中尉に任せておけばいい!。」
 「なんで、そんなに戦いたいんだ!?」
 「女の子なんだから、休めるんだったら、休んでいればいい…。」

 そんな作業員のとは相対的に、彼女は必死に見えた。その姿は、同じ年代のマサヤとも相反していた。ロイは乱れる彼女の姿を頭上で見ながら、

 「出られるというのなら、やってみるがいい。」
 「…中尉!?、何をいっているんですか。」

 彼女を取り押さえていた、整備長フランクは言った。

 「とりあえず、そのよごれた服を洗うんだな、曹長。」

 彼の体は、各種L.E.O.の機体を整備し尽くしているため、油まみれになっていた。フランクは、しまったとばかりエレンを手放す。すまなそうに、エレンへ顔を向けると、苦笑いをした。

 「ありがとうございます。クズハ中尉。」
 「ただし、無茶はするな。ついてくるだけでよい、よい経験であるように。」
 「はいっ。」

 端切れのいい声は、格納庫全体に広まった。

 「しゃーない。Syrinxはエレンちゃんが乗ってきたままだ。癖も残ってるから、乗りやすいだろう。」
 「あ、ありがとうございます。」
 「死ぬなよ、死んだら、みんなが不幸になる。」
 「はいっ。」

 素直な返事が帰ってきた。うれしいあまりに声がハイテンションとなり、クルーをなごます。エレンは、飛びつくようにコックピットハッチの中へ消えていった。フランク達は、苦笑いをしながらため息を漏らし、お互い納得するのだった。
 そんな時、

 「お前誰だ!?。…お、おい。」
 「どうした?。」

 フランク達が気がつき振り向くと、一人の男が、艦外服も着ずにタラップを蹴ってRynexに向かっていた。ロイも男と同じく向かっていたが、男の方が速かった。ロイは口元を緩め、フランクらにこう言った。

 「かまわん、放っておけ。」
 「…!?、どういうことです、中尉。」

 ロイは、ようやくRynexの翼の位置にたどり着く。

 「マサヤ君、生きるための戦いをしろ。」

 その言葉が彼の耳に届いたかどうかは分からないかった。
 緊張は誰にもあった。コックピットに乗るマサヤとエレンはさらなる意識を感じていたに違い無い。
 ロイは、タラップに戻ると、駆け寄った一人の作業員が叫んだ、

 「捕虜が逃げたぞ!。」
 「はは、遅いぞ。」

 ロイは彼の言う脱走者の居場所を指差した。指差す方向には、RynexとSyrinxだけだった。

 本来ロイが乗るはずの白い機体Rynexに火が入り、ウォーミングアップが開始された。その挙動を確認すると、ロイは、ストールのL.E.O Rynex-VMに向かった。
 各自発進準備に入った。フランク達は、格納庫のハッチを開ける準備を行う。艦内が慌ただしくなり、多くの人が一つの規則性の中、動き出す。戦闘態勢が取られた。

 「2機とも死にたく無ければよくきけ、機体射出後、バフラヴィッシュ防衛ゾーンで待機。敵の様子を見る。無闇に動くんじゃあ無いぞ。クズハ中尉、出られるか?。」
 「準備はしている。私はストール少尉の機体を借りる。」
 「よし。…クズハ中尉、よろしく頼む。」
 「了解した。」

 ロイのL.E.Oが機体射出カタパルトデッキにセットされる。

 「クズハ・キュレイ、出るぞ。」

 エンジンの高回転音が艦内に響く。機体を支えるシャフトが放され、勢い良く飛び出す。発進のアラートが点滅し、エレンとマサヤも順次発進の許可が出た。

 「Syrinx、エレン・ヤツルギ出ます!。」
 「…マサヤ、いきます!」

 敵との戦闘は間近に迫っていた。

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