TF

創作物語 ThunderForce forever

第10話 GUARDIANS攻撃部隊 - 戦いの中の自分 -

 白い機体は、マサヤを興奮させた。満点に広がる宇宙、操縦桿からくる心地よい振動は、彼の瞳をより大きく開かせた。目の前のコンソールディスプレイには、CLAW濃度を示す各測定値や分布図などが散らぱっている。操縦者を取り囲むように広がるスクリーンが戦闘視界を広げるだけでなく、機体感覚を捨てさせ、全神経を戦場空間へ解放させてくれた。
 バフラヴィッシュからの通信が入る。敵がS.O.Lの散布したCLAW領域に突入したと言う警告だ。
 マサヤには聞こえていた。しかし、返事はできなかった。緊張からではなく、戦闘という奇妙な感覚が襲い、彼を我に帰らせた。
 マサヤはふと宙を見つめ、独り言のように呟くのだった。

 「俺…、何をやっているんだ…。」

 バフラヴィッシュは戦闘速度へ移行した。

 「CLAW濃度を戦闘レベルへ。全艦、第一種戦闘配備!。」

 ロイ達を支援すべく、艦艇戦闘範囲にCLAWを自ら散布し始めた。艦長の言葉は各員に呼応され、各砲座準備、索敵態勢が整えられていく。
 CLAW粒子は、意図的に散布できた。戦闘が激しくなると各L.E.O機のエネルギー消耗も増大する。そこで、ある程度自ら散布し戦闘空間を有利な形に変えることができるのである。
 散布されたCLAWは、その中心地より水の波紋のように広がっていき、一定の波とリズムを生み出す。この空間に敵が潜入すると、CLAW波形が乱れ、波長がソナーのように敵突入箇所を適格に伝えてくれるのだ。こちらとしては、先手をとることができる。また、波長の違うCLAW粒子を浸透させることは難しく、この間、敵にとって不利となる。自分と異なるCLAW波形を、いかに早く同調させるかが敵地での鍵となった。
 マサヤの握る操縦桿が瞬間に動いた。その無意識な動きに彼は気がついていない。
 Rynex以降に開発されたL.E.Oシリーズは、パイロットを二人必要としないシステムが採用されていた。もともと、軍事開発ではないメディアで生まれた技術であったが、ダイダロス・コーポレーションがフィードパックした。

 Unconcious Psyche-System

 無意識下で行われる神経網をL.E.Oシステムと連結させ、もう一つの自分を仮想的につくり出す。絶対的信頼のおけるもう一人の自分が機体本体を制御できるようになったのだ。これにより、意識、無意識による索敵と機体操作が可能となった。
 機体反応速度は、パイロットを二人にわけていた時代を凌駕した。
 マサヤの機体は素直に敵の方向を向いていた。マサヤは、頭より身体が先に動いたのである。しかし、彼は判断を間違った。こちらが散布したCLAW空間から飛び出し、戦闘を始めてしまったのだ。

 「青いね…。」

 シェリーの言葉だった。

 ロイはトリガーを引こうとした。しかし、引けなかった。こちらが不利になるからだ。マサヤの特攻は無視できないが、ここで彼を助けに出てると相手の思うつぼだった。

 「彼をやらせるわけにはいかない。エレン、君は後退してブライと合流しろ!。バフラヴィッシュを支援するんだ。」
 「りょ、了解!。」

 緊張が伝わってくる。マサヤはシェリーのL.E.Oに釘付けとなっており、周りが見えていない。その証拠に、他の敵機影が彼を捕らえようとしている。

 「良くやる…、マサヤ君。が、位置がまずい。」

 ロイは内心嬉しかった。S.O.Lの戦力強化ではなく、彼の素質にである。

 「死なせるわけにはいかないな…。」

 「Syrinx!、クズハ中尉の援護に回れ、こちらは、まだ大丈夫だ!。」
 「しかし、中尉が、バフラヴィッシュを守れと…」
 「エレンはその場で待機、我が艦の援護だ!、大丈夫だ、クズハ中尉ならやってくれる。ストール、ブライ、順次発進 準備をしておけ!!。」

 ブライのL.E.Oがバフラヴィッシュの前に出た。エレンは、各砲面から降り注ぐレーザー砲にレーダーではなく視覚が反応している。U.P-Sもうまく反応していなかった。汗ばんだ手からは 全方位を見渡す余力を残っていないことがわかる。ブライはそんな荒い息遣い彼女を刺激しないよう、敵を自分へ引き付けては叩いた。

 「いざとなったら、あれで…。」

 エレンは以前Styxの部隊を一気に叩いた武器を思い出していた。下唇を噛み締めてぐっと堪える。その武器に恐怖を抱いているように、顔が強ばった。それでもなお、彼女はSyrinxを高速飛行形態へ変型させ、武器の発射態勢をとった。

 「…いや…。」

 下唇はいっそう強く噛み締められ、閉じては行けない目が閉じられた。
 ロイはスロットを全開にし、マサヤを狙った敵に横滑りをするように突撃した。その行動は正気のパイロットがやることではない。CLAW粒子を片側に集中させ防御壁をつくり出し、敵L.E.Oを弾き飛ばした。
 飛んだ敵にFREE-WAYが被弾し、CLAW粒子の弾ける火花が飛び散った時に、ロイの直線上にいる敵は全て打ち落とされていた。

 「なに!。」
 「マサヤ!聞こえるか、敵に引かれ過ぎだ!戦慄を守れ!。」

 ロイの機体は逆噴射とともにすばやく反転し、シェリーの前に出た。

 「こいつ!、何者だ!。」

 シェリーはかまわずツインショットの引き金を引く。ロイの機敏な動きにすべてかわされ、彼女に突進してくる。二人は接触するかのようにすれ違った。シェリーはCLAW粒子の激しい摩擦で弾き飛ばされた。
 ロイは、マサヤと合流した時、FREE-WAYの着弾が見えなかったことが気掛りだった。だが、マサヤを救うことができたのでよしとした。
 シェリーのL.E.Oは、コックピット内の機器系統も不安定な状態に陥っていた。そんな中、通信が入る。

 「シェリー、我が艦は敵と思われるものと交戦中だ!、至急戻ってこい!シェリー!。」
 「撤退だと!、敵の攻撃?!、なんて中途半端な!。」

 機体のU.P-Sをリセットし、シェリーは攻撃目標を変えた。敵編隊の動きが一斉に変わる。
 彼女は、ロイの強さと突然の撤退にいらだちを見せていた。その矢先、Syrinxが目に留まる。

 「あれが敵、ジーンを落とした。…ならば…。」

 シェリーを筆頭に、敵L.E.O編隊は一斉にバフラヴィッシュを目指した。その訓練された動きは、すばやく、ロイとマサヤが態勢の立て直し前に、開始された。

 「敵の母艦も拝見しておくか…。」

 「今までの部隊とは違う、訓練された部隊だ。」

 戦場の流れに気がつかなかったマサヤは、瞳孔を開き荒い息をしていた。

 「動けるか!、戻るぞマサヤ!、戦慄を離れ過ぎている。」

 ロイのあRynexがアフターバーナーをかけたとき、マサヤは彼のいう通りに動いた。
 そんなマサヤに体ではなく、心に直接響く感覚を得た。U.P-Sが誤動作したわけではなかった。だが、それはRynexを前へ押しやった。

 「…エレン………、動け!エレン!!、ためらったってしょうがないじゃないか!、早く!。」

 不振なCLAW波動が彼にそう伝えたのか、それともなにか別の感覚が彼を襲ったのか、Rynexのスロットを全開にしてそう叫ぶのだった。
 ロイもまた、事の異常さに気がついた。しかし、すべて時間が足りなかった。
 引き裂くようにスロットを目一杯引き、二機のRynexはバフラヴィッシュに近付いていった。
 機体にさらなる加速感がうまれ、味方が散布したCLAW粒子帯に突入感を得た時だった。バフラヴィッシュの片側に小さな光の筋と赤い光が見えた。散らばらるように見えた閃光は、大きく旋回し、宇宙空間に舞い上がっては消えていった。
 Rynexのコックピット内には、ラジオの雑音に似た言葉が流れては消えた。

 Syrinx撃墜。

 マサヤはどっと背席にもたれ掛かった。そして、周りの音より胸の脈打つ音がうるさいことに気づく。息ができなかった。

 「…そうか、…思い出した…。僕は、ただ…、この白い機体に、乗りたかったんだ……そうだ、そうだった……ずっと、ずっと昔から、この機体…。」

 空虚な満足感が全身を通り越していった。寒気がするくらいに汗が冷え、宇宙の暗闇に、ひとり浮かびはじめた。
 マサヤは空を見つめ、ただ汗ばんだ手の感触に恐怖を覚えるのだった。

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