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創作物語 ThunderForce forever

第11話 中立区域 - 次の作戦 -

 GUARDIANSは力を強調したが、その勢いはすべての銀河連邦には轟かなかった。数百年という時の中で、 人という同種族同士が殺し合うことは考えられなかったからだ。
 今日、人殺しのできる部隊は少なかった。
 結果、力を見せつけたものが正義をふりかざすことになる。
 亡霊戦争といわれる戦争はこうして行われたのだ。

 亡霊戦争前。銀河連邦は、GUARDIANS軍備強化の動きにあわせて、銀河連邦内反GUARDINASらによりケルベロス・システムにある無人防衛システムを復活させた。これは、オーン帝国が使用した強力な兵器であったが、大規模な惑星間戦争を避ける唯一の方法でもあり、彼らへの抑止力のためだった。
 システムは、亜空間航行利用の普及もあり、ほぼすべての惑星に配置していることを考えると、この防衛策はひとつの妥協を除いて、最善の策かと思われた。その妥協とは、この兵器利用する代わりに、システムの民間利用を規制しなければならなかったことだ。GUARDIANSの独立した軍事行動は、銀河連邦にとっては公にできるものではなく、銀河連邦は、頭を抱えた。
 その後、銀河連邦は、民衆の非難を買いながらも、システムの凍結と防衛策の実行した。だが、それが始まりとなった。ケルベロス・システムの攻撃兵曹は、オーン帝国のものそのままであったため、この復活は、潜伏するオーン帝国軍の活性化に繋がってしまったのだ。彼等の殲滅を目的とするGAURDIANSは、ここぞとばかり銀河連邦を批判した。
 GUARDIANSとオーン帝国残党との戦火が激しくなっていく中、最悪の事件が起きる。オーン帝国軍残党が、ひとつのケルベロス・システムを掌握し、一つの惑星を破壊するのだった。
 これを銀河連邦内反GUARDINASらは、GUARDIANSによる意図的な事件だと反発。GUARDIANS側は当然、銀河連邦の非を公言し続けた。こうして、人類同士の戦いが切って落とされることとなったのだ。
 人々の目には、オーンの亡霊に取り憑かれた姿が映ったことだろう。

 多くの民衆は、GUARDIANSを支持した。この戦争で多くのものを失った銀河連邦は、GUADIANSの意のままとなっていき、後に、彼等は、銀河連邦の解散を命じ、新たな統率者となるのだった。

 この惑星共同体として長い歴史を持つ銀河連邦が幕を下ろす中、反銀河連邦組織S.O.Lは、結成を急いだ。そして、この全ての発端であるケルベロス・システムに一途な希望を見い出していた。オーンの名残を排除し、兵曹システムをコントロールすることで、民衆のために亡霊戦争のような惑星間戦争を未然に防ごうとしたのだ。幸いにも、システムに精通した技術者も銀河連邦を去り、解散した技術者を取り込むことでS.O.Lはこれを実行に移せた。無人防衛機動モジュールの独占に踏み切ったのだ。
 しかし、銀河連邦解散劇に情報が散乱し、混乱の中で、ケルベロスに関する資料が紛失した。GUARDIANSはこれを奪取。彼等もまた、制御することに成功するのだった。
 これにより、各軍事派閥のシステムによる戦いが激化することは目に見えていた。だが、事実上は、冷戦となり、事態は回避された。
 永世中立を唱えるライト恒星系、アクエリアの力であった。
 システム制御のコントロールパネルを3つのパネルに分け、GUARDIANS、反銀河連邦、ライト恒星系(中立系)に分断し、民主的に多数決制御判断が取られることとなったのだ。

 銀河は分断される…。

 「シェリー、すまなった…」

 堅い顔をした艦長は、冷や汗をかき、妙につやのある額に手をのせてそう言った。
 彼女は、自分の戦闘能力をアピールできるはずだったぞと、少し険悪な顔で艦長を見て鼻で笑った。

 「GUARDIANSのためになるのであれば、どこでも戦闘はしますよ。」

 その言葉に安心したのか、艦長は席に深くもたれた。

 「S.O.Lの新兵器か?あれは。私が戦っていた敵は、揺動なのか?」
 「違うな、たった2機だぞ。遊ばれた感じがするな。」
 「ふん…」
 「あれは本当の敵では無い。」

 二人の会話を横に、硬い表情でブリッチに一人の男が上がってきた。

 「…ジーン。」
 「ジーン大佐。今回はすまない、君も来てくれて助かった。」
 「あれは本当の敵では無いというと、どういうこと?。」

 少し膨れたシェリーだったが、ジーンを前に、気取ってみせた。

 「そのうち分かる。」
 「…?、はぐらかすな」
 「ところで、ジーン大佐、君の乗ってきたL.E.O、あれはFireL.E.Oなのか?、君のにしては物々しいが…。」
 「そうね、ずるいわ。」
 「上からの試供品だ。それに…先ほどの敵の方が、まだFireL.E.Oに見えるというもの。」

 シェリーの顔が曇った。ジーンのFireL.E.Oへの執着は今に始まったわけではないが、そのこだわりが彼を変えたことを忘れられなかった。

 「しかし、あれのおかげで助かった。すばらしいスピードと攻撃能力だ。」
 「…ここまで容易に来られたのは確かだ。艦長。それでは失礼する。」

 そういうと、配属の書類やレポート、ジーンの乗る新型のL.E.Oの整備マニュアルを艦長に渡し、 シェリーと共にブリッチをでた。
 『L.E.O』は通常の小型戦闘機を意味するが、先頭に『Fire』がつくと、別格となる。特別な任務のために造られる、特別な高機動小型戦闘機と成る。ジーンは前大戦にStyxというFireL.E.Oに搭乗していた。その次世代機であるRynexには、親友ロイが搭乗していた。
 男女二人、狭い艦の通路に並び、ブリーフィングルームに向かう。

 「戦前復帰かしら、ジーン。」
 「そうは言えまい、私は、自分の居場所を降ろされたのだぞ?。」
 「あなたの望む第一戦じゃ無い?。」
 「私の望むものは、銀河連邦そのものだ。」

 シェリーは、ジーンの強いその瞳を見た。

 「血筋だけでは、上は狙えないのかな?、ふふ。」

 目と口を閉じ、大きく呼吸をするジーン。
 くやしくもシェリーは皮肉をいったつもりだったが、ジーンは彼女の雰囲気を感じ取っていなかった。

 「俺は…オーンを消滅させるために…、…シェリー…。」

 言葉は濁り、頭を少し横にふると、眉を細めた。

 第一次戦闘態勢が解除された。
 バフラヴィッシュ艦外、艦内、クルー達は船体の修理に勤しんでいた。もちろん、最優先されたのはSyrinxの回収、修理であった。機体は、左のRound-Dividerを中心に無惨に破壊されていたが、シェリーの一撃が、彼女の反撃とほぼ同時だったため、致命傷にはならなかったようだ。そんな作業の中、エレンの姿もあった。
 マサヤはロイにより捕虜の身分を解放される。彼は今回の戦闘において、S.O.Lへの十分な戦力になると判断されたからだ。自分の運命を自分で決める間も無く、彼は、戦いに引き込まれることになる。そんな彼自身も、パイロットの道を自分から望んでいることを認めていた。自分に無い軍規と部隊行動の素早さをもつエレンに、彼は負けたくなかったのだろうか。
 エレンは、今回の戦闘で力を見せたマサヤを横目に、傷をおいながらもS.O.Lに参加することを強く望んだ。しかし、深手を負ったその身体は彼女の望み通り動いてはくれなかった。
 マサヤは作業風景を通路で眺めていた。エレンと喧嘩をしても、艦内のクルーに言い包められても、ただ毎日そうしていた。Syrinxは解体され、フランクらの手によって修復作業が徹夜で行われていた、敵は待ってはくれないのである。

 「今日もひとりか、なにやってんだ、いっつも。」

 気さくに声をかけてきたのはフランクである。マサヤは彼に顔を向けること無く、ただSyrinxを見つめていた。

 「戦う理由がないんですよ…、僕の一撃で敵のパイロットは死ぬでしょ、死にそうになったことありますから…辛いんですよ。」
 「なに言ってんだ。そうしなきゃ、自分が死ぬんだぞ。」
 「わ、わかってますよ。だから、こうして、悩んでいるんですよ。」

 ちょっと怒り、マサヤはフランクの顔を見つめる。フランクは、顔を向けてくれたことに微笑み返した。そして、彼の悩みを聞き出そうと試みた。

 「別に。…ないですよ。」
 「ったく、何うじうじしてんだか。やりたいこととかないんか?。」
 「ありますよ、こんな馬鹿げた戦争、早く終わらせたいです。」

 そういうと、マサヤはSyrinxを目を細めさらに見つめるのだった。
 フランクは、そんな彼に苦笑し、見下ろした。油でよごれた手袋を取り、ポケットに手を入れると、

 「食うか?。」

 ガムを取り、それをマサヤに差し出した。

 ロイは、グラスの水を飲み干すと、それをテーブルに置きつつ艦長をみた。准将は腕を組んで目をつぶっている。

 「GUARDINASは、たしか過去に一度銀河連邦によって解散されているな。」
 「いや、正確に言えば、「銀河連邦軍」という組織が結成、解散している。」
 「銀河連邦は、オーンに対抗すべく「軍」を組織した。利用するだけ利用していたわけさ。利用され、捨てられた人々はどうなるかわかるだろう?、クズハ中尉。」

 話の流れは、ロイの意見を積極的に求めたが、彼は話をずらした。

 「…そうとも限りませんが、GUARDIANSの銀連邦解散劇は仕組まれたものなのは確かだ。」
 「我々への牙の向けようも、そこから来ているのかも知れないな。今の我々は、GUARDIANSの嫌う銀河連邦残党軍であるのは確かだからな。」

 艦長室に集まった3人。ロイだけがひとりテーブルの前で立っている。

 「だとすると、今の我々の行動も、筒抜けかもしれないな。」
 「ハーデスを中立区域の隠れ蓑にするのは、軽率だと言いたいのかな?中尉は。」
 「そうではない、この間の奴が来ることはないでしょう。前回の作戦で、GUARDIANSは混乱しています。それを利用してここまで来られた…が、これ以上運は続かないだろう。」
 「今の我々の戦力だけでは、辛いか…、次の作戦こそが、我々の再重要項目なのだがな。」
 「彼等の動きも目に入れて展開するべきです。我々が具体的に動いたことで、すでに航路配下に待ち構えていることでしょう。ここから先、ゲリラ戦にも対応していかないと。」

 会話は途切れ、准将と艦長はグラスの水を口に入れた。

 「…そうだな、クズハ中尉。対応してほしい。」
 「了解した。もうすぐプラズマライン航路に差し掛かる。頃合いだろう。」

 S.O.Lは基本的に戦闘は避けることにしていた。武力行使は、決して民衆を味方にできないからだ。彼らの軍事介入をGUARDIANSの抑止力と受け止める人々は余りにも少なかった…。
 S.O.Lの航路としては、オーン恒星系を脱出後、中立区域、惑星ハーデスを通過しプラズマライン航路に出る予定だった。しかし、Syrinxの思わぬ被害と船体の負傷に、戦力を維持しながらの航海が現状厳しくなったのだ。GUARDIANSの素早い戦闘展開も予想を覆していた。
 ロイの不安は適中していた。身動きのとれないS.O.Lと戦闘を広範囲で転回できるGUARDIANSとでは結果は見えていた。
 艦内にオペレーターからの声が響き渡る。「第一種戦闘配備」だった。

 「『本艦は中立区域、プラズマラインに到達した、総員監視を強化せよ、くり返す…』」
 「無事に過ごせれば良いのだがな。」
 「フランク、Rynexは出せるか?!」

 ロイは、飛び出るように格納庫へやってきた。すぐさまタラップを蹴り、無重力空間に流れた。

 「待って下さい中尉!、Syrinxの整備で手一杯です、Rynexはもう少しかかります。」
 「動けばいい、この区域を偵察するだけだ。」

 本当に動くだけだと、コックピットハッチの前でロイの了解を取るフランクは、心配そうな顔をかかげていた。ハッチが閉まると、格納庫は慌ただしく発進プロセスに入る。

 「エア・ロックを解放する。作業員は退避だ!。」
 「クズハ中尉だって、戦いに引き込まれているのさ、…好きなんだよ、戦うことが。」

 マサヤは、愚痴をこぼすとその場を後にした。

 小惑星帯に身を潜めた数機のL.E.Oがいた。この中立区域にゲリラ戦を展開しているGUARDIANSの敵影だった。

 「S.O.Lの艦艇がそろそろ見えるだろう、情報ではハーデスをかすめるはずだ。」
 「その情報は正しいんですか?中尉。私が見たところ、わざわざ、分かりやすくハーデスの公転周期にS.O.Lが合わせるとは思えません。べたべたじゃないですか?。」
 「フリッツ。上に報告するぞ。」

 隊長とその部下のL.E.Oは、小惑星に張り付くようにL.E.Oを並べていた。

 「…すみません。」
 「マサヤの仇を取りたくないわけじゃあるまい。」
 「まあ、それが部隊というものです。」
 「だったら、俺の言うことをきけ。間違いない。」

 フリッツと呼ばれる一人のGURADIANS隊員は隊長の言葉が悔しかったが、次の瞬間自分の目を疑った。CLAW粒子の乱れが、レーダーに映し出された。

 「隊長、き、来ました、敵です。」

 隊長は少しばかり、胸をなで下ろすと、L.E.Oに火を入れた。
 同時期、ロイも敵の影に気付いていた。CLAW粒子は敏感に反応し、Rynexの挙動を変えていた。

 「やはりな…。中立区域内でゲリラ戦か、よくやる。」

 1機のStyxがロイの正面に出た。
 ロイはすかさずRynexを縦にし、敵にクロスするようにするように突進した。激しい衝撃は空間を歪める。焦った敵は、攻撃する暇もなく態勢を立て直すことになる。
 すかさず、敵の裏に出たロイは、Twin shotを放つが、 照準がぶれて敵を落とすことはできなかった。

 「ふう…助かった…。あのパイロット、やる。」

 ロイはすかさず、ズレを補正する計器を操作した。

 「ええい、…ここで足留めされては!。」

 バフラヴィッシュでは、ロイの戦闘態勢に気が付いた。同時にマサヤは、L.E.O格納のタラップを蹴っていた。その瞳は、修理を終え人気のいない機体、Syrinxへ流れていた。

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