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創作物語 ThunderForce forever

第12話 マサヤ・A・キューベリック - 宇宙 -

 マサヤはSyrinxに飛びついた。

 「どけよ!。」

 彼を止めようとした数人の男達をはね除けると、コックピットのハッチにとりついた。
 それを静止させようとしたのか、エレンがマサヤに飛びつき、押し戻した。彼女は怪我も回復してきており、包帯も数カ所しかなかった。
 マサヤは、自分が護衛に回ると強く言う彼女に腹を立てた。彼は、いじわるに剥がれかけた頬のバンソーコをむしり取り、タラップの方へ投げるのだった。

 「!痛ったい、なにすん!!、私が出る!。」
 「また壊したいんかよ!、俺が出る。」

 コックピットに姿を消したマサヤは、機体のマスターキーを確認し、コンソールパネルのスイッチを入れる。スクリーンに映し出された彼女に目を合わせた。

 「お前って、むちゃくちゃなんだよ!、死に行くみたいでさ!。」

 聞こえるはずのない言葉を捨てた。

 「誰が乗っている?Syrinx、出られるんだな?。」

 ブリッジからの通信が入った。
 まだバフラヴィッシュでは、マサヤに慣れていない雰囲気があった。この通信もマサヤの行動に釘を指すように、鋭くつかれた。マサヤはその気持ちを察すること無く、

 「Syrinxは、マサヤ・キューベリックでいきます。」
 「りょ、了解した。頼む。」
 「マサヤ、ブライだ。おまえは我々が出られるまでをバフラヴィッシュを防御しろ。いいな。」

 オペレータと違った声がコックピットに響いた。外部スピーカーで、フランクにハッチ解放を伝えると、フランクは彼に疑問を感じる作業員を撤収させてハッチを開いてくれた。その中には、最後まで抵抗したエレンもいた。

 「自分はクズハ中尉の空域に行きます。」
 「マサヤ、艦長だ。こちらは大丈夫だ。クズハ中尉と合流しろ。」
 「!艦長。」

 オペレータの声は空しく、マサヤは発進プロセスを省いて、Syrinxを飛び立たせる。機体は素早く高機動形態へ変型し、星の海へ消えていった。

 「彼を試そうというのか?艦長。」
 「いや、彼を見ていると…昔に出会ったロイ・マーキュリーに似ていると感じましてね准将…。私はヴィオス大戦の時、何回か彼の隊を預かったことがあるのだが…。もっとも、あの時、彼は私と気があったわけではないので、私なりの雰囲気だがね。」
 「…これから死にに行く人間が、周りの人の縁を作ることはない。そういう男だったな。…彼は何を思っているのだろうか…この戦いを…。」

 星の渦が取り巻き、光と違う物体がSyrinxをかすめるようになると、マサヤは、パネルと電装系のチェックした。

 操縦桿のぶれと機器の反応不備をものともせず、ロイはゲリラ戦をするGUARDIANS部隊を追い込んでいた。小惑星帯をうまく利用する彼等の動きとリズムを先読みし、常に前にでるロイであったが、落とすことはできなかった。
 舌打ちをするロイ。

 「落ちろ!。」

 端から見ると2機は小惑星帯中で小競り合いをしているにすぎなかった。そんな状態では、時間が過ぎる一方だ。敵はロイの視界から姿をできるだけ消した。

 「フリッツは母艦から敵を誘き出せ、こいつだけじゃないはずだ。援軍は、すでにBエリアに待機している。誘い込むぞ!。」
 「了解です、隊長!。」

 ロイは、敵が自分のペースを作りはじめたことに気づいた。敵の意識が彼へ集中する。
 その一瞬の隙をついて1機のStyxが、ロイの攻撃範囲から逃れた。

 「…っ!、もう1機いたのか!。」

 敵はうまく2機の機体を1機にみせる動きをとっていた。
 一定の空間内に障害物の多い小惑星地帯では、CLAW波は不安定になる。さすがのロイの感覚を持ってしても、この帯域で動きを予測することは困難であった。

 「こうも乱れるているとは、迂闊だった…。何…!?この感覚…。」
 「運が尽きたんだよ、落ちろ!」

 Rynexを背面の隕石へ反転させると、ロイは、全CLAWを解放し、背面の隕石に機体をぶつけた。その時だった、隕石が強力な粒子砲にて粉砕された。
 衝撃波と隕石の破片を目の当たりに、敵はRynexを照準に定めたものの、後退することもできず隕石の破片と区別がつかなくなっていった。

 「なにやってんですか、中尉は!。」

 ロイの前にSyrinxは通常形態へ姿を変えると、敵を追撃した。そのBLADEの乱射は、敵への恐怖の現れだった。

 「Syrinx!?、乗っているのは誰だ、マサヤ君か!?。」
 「中尉、しっかりして下さい。敵の目的はバフラヴィッシュです。こんなところで戦闘して、なんになるんです!中尉だけでも戻って下さい。」
 「…了解した。マサヤ、Syrinxは大丈夫なのか?。」
 「大丈夫です。」

 彼の言葉を聞くと同時に、ロイは逆噴射し制動をかけた。

 マサヤは焦っていた。発進の時の勢いは、恐怖にかわりつつあった。敵意に満ちた空間にいることを実感しながらも、その敵を具体的に見出せずにいたからだ。これは、彼が宇宙を嫌いになった理由でもある。この具体的な敵は、人類そのものであることは言うまでもない。
 マサヤはGUARDIANSに所属する前、連邦軍士官学校で軍律を学んでいた。もっとその前は、銀河連邦パイロットであった父の姿を追いながら、農作業用飛行機乗り、母の手伝いをしていた。目の前の現実をこなすことしか、生きる希望が無く、唯一、人類の為に戦う父の後ろ姿が、夢見枕として彼を支えていた。そんな父もオーンとの戦いで、帰らぬ人となっていた。
 辺境惑星で生まれた者は、必然的に軍に所属した。自分達の生活を少しでも軽減させる為である。しかし、オーン帝国との戦いは終戦し、銀河連邦の解散となった今日、彼らが軍に求めたものは、生活維持の「仕事」だった。GUARDIANS編入も、こうした意識変革の中、行われていったのだ。
 しかし、人類同士の初めての戦いである亡霊戦争後、新兵達は、見えない実戦に取り込まれていく。勇敢なる戦士達の戦いは、夢物語となっていた。
 彼らに対して、部隊行動訓練は行われていた。だが、この各自意識の違いが、戦場の恐怖を増大させた。マサヤもまた、人類同士の戦いに恐怖を感じているのだ。殺りく、殺伐した仕事と自分の持つ憧れ、体と気持ちの不安定さが、今の彼の全てなのかもしれない。
 彼は、敵兵の消えた隕石群に威嚇射撃を放っては、空域の奥へと機体を進めた。焦りが具体化していった。

 「マサヤ、状況を見失った者は死ぬぞ。敵は、ここにいたゲリラ兵だけだとは思えん。深追いするな。」
 「しかし!。」
 「私の指事で動け、絶対に死なせん。」

 スロットが滑った。緊張の汗からだった。常に回転する宇宙空間と不安定な重力、目の前が白くなる。そんな彼に鞭を打った言葉だった。

 「敵が我々を足留めする…、我々の真意がわかったとは思えんが…、マサヤ!お前はこの空域を離脱しすぐさま惑星ハーデスへ行け、星系図は出せるな?!。」
 「は、はい。」

 あまりに唐突なことに、少し動揺したようだった。我に帰るように、マサヤは素直にそれに従った。

 「艦へ戻ることが大切です、中尉。」
 「分かっている、戦闘空域も船も守る。それが私の役目だ。」
 「指事の意味は…?」
 「ハーデスへ行けば分かる。」

 マサヤの希望は、ロイの言葉が繋ぎ始めた。

 フリッツは、マサヤのとった経路を迂回する形で、バフラヴィッシュに向かっていた。マサヤとすれ違わなかったのは幸運だった。戦いに置いての勝利条件には、かならず運が付きまとう。もちろん、99%の戦略と力が絶対条件だが、時として、運はそれを勝る。彼は、天を味方にした。

 「見えた!、L.E.Oが出ないうちに!!」

 これにより、バフラヴィッシュの座標軸が追撃艦隊に告げられる。巨大なエネルギー軸がその空域へ向けられ、彼には別の使命が与えられた。
 ハーデスへ向かったマサヤの阻止である。

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