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創作物語 ThunderForce forever

第15話 ロイの悪夢 - 生きる意味を追い掛ける人々が見る幻想… -

 「あの坊や、死ぬかな?。」
 「さぁ、ロイが目をつけたからには、そうやすやす死にはしないでしょ…。」
 「そうか…。キャロル、お前はどうするんだ?」
 「私は、私の居場所を探すわ…もう、ここにもいてもしかないし…ね。」
 「Syrinxと言ったな、いいのか?。」
 「ええ、もういいわ。」

 若い身体としなやかさを見せつける女性は、銀色の髪をなびかせ、優しく微笑むとその場を後にした。もう一人の女性は、机の上にちりばめられた書類をまとめ、自前のコンピュータを畳むと、ため息をついた。
 大きなガラスが、ドームのように部屋を包み、宇宙を一眼できる。女性のため息は未だ見ぬ遠い宇宙へ流れていくようだった。

 「…私のもの…、もうなにも、なくなっちゃったかな。」

 ふと思い出したように、言葉は吐かれ、

 「エレン、大丈夫かな、あの子…。」

 少し心苦しそうな顔を見せると、その席を立ち部屋の光を消した。静寂だけがドームに残る。その静寂は、宇宙そのものであり、自分の居場所へ帰るSyrinxとは逆の空間であった。

 戦場は悪化していた。
 ロイの乗るRynexは3度目の補給に着艦する。Rynexだけでなく、ロイ自身の身体にも栄養剤が打たれる。ロイの身体は、その浸透を感じることもなく、敵の動き、艦隊の配備、母艦の被害…状況に機敏に反応し続けた。
 彼は整備班の心配を他所に、コックピットのハッチを閉めた。機体を固定するアームのボルトが絞まると、艦のベースハッチが開く。機体は下方へスライドし、外へ出る。
 ロイは、身体の底からくる疲労に生きる充実感を感じ取り、シートに深くもたれ戦場を見つめた。多くの光が点いては消えていた。その光の一つ一つが一瞬の命の叫びであり、次の自分であることも受け入れていた。
 カタパルトを損傷したバフラヴィッシュは、Rynexを宇宙へ放り投げることしかできない。
 ロイは再び機体に集中し固定アームを解除すると、機体はひねりながら前戦へ突入していった。
 バフラヴィッシュの弾幕に落とされるGUARDIANS兵・Styxはこれで何機目だろうか…バフラヴィッシュに残る人々は死を受け入れようとはしなかった。
 艦の役目自体は、この戦闘が起きていることで終了する。
 作戦は、惑星アクエリアにて艦集結までの時間を稼ぐことである。できるだけ目立つ行動を起こし、自らもプラスになる戦果をあげて最後を迎える。Syrinxの量産体制もの一貫であった。そのために最大戦力にて作戦を実行する。ロイは、この作戦を自らかってでた。

 「死は恐くはない…、だが、まだ死ぬわけにはいかないな。」

 ロイの動きは、敵を寄せつけなかった。
 かのヴィオス大戦をくぐり抜けた本能が、機体と魂を燃やす程熱く貫いた。敵の機体は、その圧倒的なプレッシャーに飲み込まれ、次々と落ちていく。
 ついに、敵艦一隻が沈み、一隻が半壊した。爆風の中、RynexはCLAWを解放し、身を守る。
 すでにRynexは次のターゲットへと移っていた。しかし、推進力に新たな火が灯った瞬間、強力な粒子砲が機体上方を掠める。獲物を手中に納めながら、Rynexは半壊した戦艦に押し戻され、爆風に飲まれて行った。
 その閃光は、明らかにバフラヴィッシュへ向けて放たれていた。ロイは一瞬我に戻ると、振り向くのだった。
 ロイは、機体損傷の悲鳴に反応するよう、C.C.S.Unitの破棄を行う。ユニットは破棄されると同時に、未だ見ぬ巨大な敵に向けて、最後のエネルギーを解き放った。
 その残骸は半壊した戦艦を撃沈へ追い込み、再び浮上したRynexは姿を変えて炎の中から飛び出す。その姿は、吠える獅子を彷彿させる。ロイの新しい息が、再び敵を捕らえた。

 「今のエネルギーは…。」

 巨大な姿が肉眼で確認できた。護衛とばかりに従えた数機のStyxと先刻バフラヴィッシュを襲ったカスタマイズされた機体。C1。
 …その時であった。
 ロイの脳裏に、強烈な映像が止めどもなく流れ始める。過去の記憶が、まざまざと現実の世界で再現されていく。耳元では、ブライとストールの支援が聞こえ、自分の後方に位置するのが分かる。だが、正面の敵が発するプレッシャーに、腕にしびれ、スロットの握力を失わせた。
 再び放たれた青白く彎曲した閃光は、自分を射ぬくことなく後方の味方を引き裂いた。パイロットの断末魔が耳に響く。

 「…!!ヴィオス、お前はまだ俺を苦しめるのか?!、俺は、お前の言葉を忘れたことはないぞ!!!。」

 我を忘れるように吐き切った声に、苦痛がこだました。

 「!!、ロイ…!。」

 喉に何かが詰まり、声が出なかった。息もできなかったのかもしれない。誰かがそう叫んだように聞こえた。

 「………私の名を呼ぶ…。」

 その名は捨てたはず、もう、昔の自分に戻れない、戻りたくない。しかし、今の現実は…、混乱の通信、雑音、悲鳴。認めたくない眼下の強大な敵。
 C1が飛来し、Rynexを横切った。攻撃はしてこなかった。

 「また会ったね!。」
 「!、呼んだのは、お前か?!…。」

 いや、違う!、冷静を取り戻そうとロイは、押さえ付けるように頭部をシートに叩き付けた。その声に懐かしさを感じつつ、激しく自分を攻めた。
 過去ヴィオス大戦時、ロイは謎の敵によって部隊を全滅させられる経験をしていた。その時、ジーンの言葉が、彼を新たな敵殲滅へと導き、当時、最新鋭機であるRynexに新しい命を吹き込んだ。
 しかし、今は違う。全くそれとは別の形で、彼はこの場にいる。向い撃つ強大な敵ArcAngelには、ジーンが…。
 L.E.Oの切り札は消え、そして、なにより守るべきものが後方にいる。

 「彼等はアクエリアを占拠し、パネルを手に入れることを考えているわけだな。」
 「戦争が長引けば、それはそれで良いだろう。」
 「一度は断念したが、キャロル、お前を引き戻すことで二転三転し、好機が見えるというものだ。よろしく頼むよ。」
 「そうだな、足がかりとなるものは全てお前の中にある、何もかもだ。ここに来たのだ。打算はあるんだろうな?。」

 「…ええ、ただ、私は私のことを調べたいだけ…生きているのなら生きる意味を考えてもいいと思います。」

 「我々の計画に従うのであれば、それでいい。」
 「そうだ、RynexのThunderSWORDを完成させてほしい。君でないとできないからな。我々のスタッフは、L.E.Oを別系統に進化させてしまっている。」
 「それはそれでいい…、S.O.Lの奪取したL.E.O、君が絡んだわりには我々程強力な武装していない。問題はそれではないがな。」

 「あれはある意味完結しています。…ThunderSWORDは忘れました。造れと言うのならば、造ります。」

 「いずれにせよ、我々の使命は潤滑に流れなければならない。生命の営みとしてな。」

 部屋を後にしたキャロルは、扉の向こうで沈んでは自分に説いた。
 命の快楽を何かに投げ出したかった。彼女の思いは結果を二つにわけ、別々の道を作り出すのだった。

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