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創作物語 ThunderForce forever

第16話 永遠の孤独 - 生きるための戦いとは?… -

 Rynexの数倍はあると思われる巨大な機体ArcAngelは、ロイを見下すように上方をかすめた。彼等のRynexへの攻撃意志は無く、無視された。作戦はS.O.L主力部隊壊滅にあり、ジーンはそれを冷静に遂行しようとしていた。
 ArcAngelの掻き乱すCLAWは、ロイに幻想を見せていた。
 二人はお互いを知ることなくすれ違っていく。

 「やっぱりここにいたのね?…。」

 誰だい…

 人気のない倉庫に冷たい物音が聞こえる。その音は空間で反射し、かすかに見える光に吸収されるよう消えていく。倉庫は大きな空間を持ち、力を蓄えた次期主力戦闘機が呼応している。機体へつながる一つの掛け橋があり、そこには、人の温もりが見えた。
 暖かさは、暗闇に散らばる悲しみを包もうとしていた。
 まだ聴こえるその反響音に耳を傾けるロイは、通路の手すりにもたれ、空間に差し込む光を見上げていた。彼に投げかけられた言葉も、光の中に消えていった。
 返事を待つ彼女は、あと数時間後の死を受け入れたキャロルである。彼女は静かに右足を前に出すと、再びかん高い音が部屋に響き渡る。
 わずかに差し込む光は、水面のように揺らぐ。Rynexの鼓動のみがその場の空気を振動させ、冷たい計器がほのかに光っては消える。二人の空間は遠く沈んでいた。
 ロイは、戦闘開始前に必ずここに来て一人の時間を過ごしていた。生きて戻ることは考えず、数時間後の安らぎを満喫しては、死を望んだ。
 自分の呼吸だけが気を紛らす。

 「キャロル…俺はいつでも独りだよ。」
 「…Rynex、この機体を、最後に求めたのはあなたよ。いつまで言ってるのよ。」

 どんな時も彼は独り主張していた。
 現行のL.E.Oパイロットシステムは、主パイロットと副パイロットによるコントロールを必要としていた。副パイロットにより索敵・制御がなされ、主パイロットは、敵を落とすことに専念できるのである。ロイは、このシステムを嫌い、戦場では、座席後方にて索敵・機器チェックが行われている認識のみの意識をもっていた。そう、彼にとって「何者」でもよかったのだ。
 銀河連邦は、おそらく今期最後になるこの作戦に、新システム導入を検討した。それは、ANONYMAと呼ばれるL.E.Oをコントロールするトータル・オペレーションシステムだった。作戦実行までの期間を考慮し、可能な限りこのシステムへ切り替えるよう、生産ラインを整えはじめていた。このシステムにより、副パイロットはパイロットへと昇格できるのだ。
 当然Rynexも、これ以降に開発されており、独りの戦場がロイを祝福するはずだった。

 死ぬのは一人でよい…

 だが、キャロルはそれを認めたくなかった。
 キャロルの願いが通じたのか、Rynexは、従来通り、副パイロットを必要とするシステムに戻された。この経緯については、いくつかの憶測が飛び交ったが、いつのまにか、誰もが忘れて行った。
 上の人間は、ヴィオス勢力を押さえるべく演出したわけだが、帰艦することを考えられていないRynexは、どちらでもよかったのかもしれない。より確実な作戦成功が願われ、希望は、ロイとキャロルに託された。そして、ロイの死は、キャロルの死へと繋がる。ロイにとって心地よいものでは無かったことは言うまでもない。

 「まだ怒っているの?。」

 静寂の通路に冷たく固い音がこだますると、ロイの口元に温もりが訪れる。

 「…死ににいくんじゃないんでしょ?。」

 それでもなお、ロイの目はキャロルを見ていなかった。キャロルは複雑な表情をしたが、すぐに微笑んでみせた。彼女はRynexに装備されている火器管制システムを、再度説明し始めた。それは、丁寧に、しっかりとしたコトバを拾っては、語りかけられていた。

 「ANONYMAって呼称されるシステムの撤去は行ったものの、一部は実装しているの、でね、この…。」

 再び目を開くロイ。
 戦火は激しさを増していた。
 銀河連邦はヴィオス本体あぶり出すため、惑星アクエリアへ部隊を多く派遣した。緑と水を多く育む美しい惑星は、血と炎で埋め尽くされていき、連邦は、敵拠点の襲撃を徹底した。この作戦は実り、ヴィオスは銀河連邦全艦隊を前に姿を現す。さらなる追い討ちをかけるべく、Rynexの出動を要請され、ロイは生きた実感を噛み締めた。

 「俺は、この瞬間を心から喜ぶ。何のために生きている?…、俺はこの瞬間のためだ!。」

 このとき、地獄が広がった。全く別勢力が現れたのだ。
 ヴィオスは分厚い装甲を打ち抜かれ、爆煙ととも眼下を横切る。後方支援を行うStyxはことごとく撃ち落とされ、巨大なシルエットが姿を現す。
 スロットを握る手が少し震えた。銀河連邦艦艇は次々と追撃・撃墜され、無抵抗のまま壊滅状態を迎える。断末魔が、Rynexコックピットに流れては消え、ヴィオス勢力は、精神が破壊され、狂いながら見知らぬ敵に自らをぶつけて行く。
 ヴィオスを凌ぐ強大な力の遭遇が、ロイの意識下に潜入してきた。スクリーンが彎曲し、幻影が襲う。攻撃意志は衰える。だがロイは、心地よさを感じ始める。キャロル声は聞こえない…、溢れる数値と錯角に、ただ自問自答をくり返しはじめる。
 戦場に伝わる硬直した無音の空間が、新たな敵を前にし、永遠に続いていくよう感じた。
 決定的な戦力差を出せないまま、後退を余儀無くされた。敵が遠ざかるにつれて、二人は意識を失いつつあったのだ。このとき、彼らに新たな力と司令が、舞い降りるのだった。

 「!!、ロイ…!。」

 ジーンの声が聞こえた。しかし、目の間に広がるのはまぎれもなく現実だ。
 巨大な敵ArcAngelは、自分の後方に位置した。ゆっくりと機体は旋回し、敵を捕捉する。

 「ジーン…、私も少しはできるようになったか?。あのとき、お前は…。」

 戦いが英雄を生み出し、戦いに心を置き去りにしたロイとジーン。再び戦場へ戻り、互いをわからぬまま敵となっていた。
 幻想の光景は、ArcAngelに重なって見えた。引き金は軽くなっている。

 「私は…………、いいだろう、やってやるさ。」

 残弾を放出させると、ArcAngelのCLAW波を飲み込んだ。
 FREE-WAYは、ArcAngelへの宣戦布告となった。しかし、巨大な機体は揺るがず、前進を続ける。残りのCLAWを敵機に向けて解放する。ArcAngelを射程距離に捕らえた。
 ロイの気迫に染まった機体は、ArcAngelの大きさを凌駕しているようだった。
 コンソールウィンドウに警告の文字が無数に広がっていく。索敵がアラート共に共鳴する。

 「えぇい、戦いを終わらせるのだよ、ジーン!。」

 ロイの特攻は、Rynexを本来の姿に変えていた。
 機体から放たれたTWIN SHOTは、敵機間近で激しく拡散し、CLAWによってつくり出される球体フィールドが肉眼で確認できる。CLAWが乱れ、ArcAngelの制御が混乱する。
 隙ができた。ロイは予め敵のそこを知っていたのか、ArcAngel後方右腹部を刺すように機体をぶつけていく。RynexのCLAWアタックは巨大を揺るがした。

 「なんだと!。」

 ジーンは、普通とは違う敵がいることをシェリーから聞いていた。だが、それとは違うものを、無意識下で体が反応した。

 「!ええい!!。」

 懐かしさを感じる。ジーンはスロットを冷静に引き、Rynexの後ろをとる。ArcAngelは激しい閃光と共に数本のレーザーを発射する。それはRynexを捕らえ彎曲しCLAWの隙間を縫ってはダメージを与えた。

 「しかし…、シェリーから聞いたイメージとは違うな、このプレッシャー…。」

 ロイの表情は固く強く一点を貫いていた。舌打ちをすると、ArcAngelとの距離を縮めずそのまま上方へ旋回する。ターン。すぐさま後ろへ回り込み、ターゲットスコープがArcAngelを捕らえる。衝突を恐れず加速し、機体の後部を掠めるように攻撃する。
 ジーンは機体スピード緩め、やりす越しを計ったが、仇となった。強度の弱い部分へカウンターの打撃が加えられたのだ。CLAWの火花が残像となる。

 「同じポイントに攻撃だと!?できるっ!。」

 ジーンはロイの攻撃に引かれ、部隊戦慄を離脱した。ArcAngelのアフターファイヤが吹きあがる。Rynex性能限界ギリギリの速度と動きも、ArcAngelは一瞬で凌駕できた。

 「ちぃっ!。」

 ロイは残りの弾薬とCLAW展開率をチェックした。

 「ジーン、作戦を忘れるな!。」

 シェリーは叫んだ。声は届かず、シェリーを頭とするC1-Styx部隊もArcAngelと合流すべく旋回する。
 ArcAngelはその大きな機体にもかかわらず、Rynex以上のスピードでロイを追撃する。

 「部隊外行動もとれるというのか!あの機体は!。」
 「いつまでも、貴様らの好きにはさせん!。」
 「戻れ!ジーン!!」

 様々な意識が交差した。その時だった。彼等の戦場とは全く違った方向から火線が走った。質量が大きく、エネルギーの筋はCLAW粒子を吸収しているようだった。閃光はC1部隊を掻き乱し、各機体からダメージのエネルギーが飛び散っている。シェリーは、弾き飛ばされた。そして、その質量はArcAngelの片方のエンジンを貫くのであった。

 「なんだと!!、っく、ただでかいだけで役に立たん!。」

 制御を失ったArcAngelは、先ほどからのダメージを加え、出力不足に陥った。
 ロイは火線の方向に目をやると、戦場を横切る白と青で包まれた機体が目に入った。彼は、戦慄を離脱し、Syrinxと合流した。

 「マサヤか!?、なぜ戻った!?。」
 「僕にだってやれることがあるんです!。」
 「………わかった。バフラヴィッシュが気になる引くぞ!。」
 「中尉…。」

 戦慄を離脱する2機のL.E.O。

 「引き込まれ過ぎだ!ジーン!!。」
 「…すまない、……私を再び、戦場へ引き込んだFireL.E.O…。ロイ、俺は、お前の亡霊を追っているのか?。」

 ジーンは、機体を立て直し、部隊を再び統率する。ロイ達を追い詰めるべく、部隊を進ませるのであった。

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