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創作物語 ThunderForce forever

第23話 アクエリア攻略戦前夜(後編) - 敵の意志 -

 「艦は、方位修正+20。速度、第1次戦闘速度へ。」

 マサヤが戦闘区域に突入したとき、敵は散開した。まとまって飛行していた3機は、全く別々の方向へ散っていったのだ。

 「敵の目的は、バフラヴィッシュにある。逃がすわけにはいかない。」

 マサヤは、前回のミスを心において、敵を追った。

 「この間の奴か!?、なぜ、逃げる?」
 「敵の動き…妙だな。」

 敵は、ロイが放つBLADEを避けては散開していく。セネスは一歩引く形で戦場を見ていた。
 マサヤとロイが旋回しながらそれぞれ背中合わせになる。そこへセネスが重なり、すれ違っていく。3機は固るように飛び始めた。敵の動きは、これを誘発しているようだった。

 「ひっかかったな。」

 カインは頬を和らげ、敵の動きを笑った。
 カインらは、戦闘範囲を広げていった。応戦するロイ達は、挟み撃ちを試みるが1機のL.E.Oに対し、3機のL.E.Oがまとわりついた。1機の救出劇が終わると、また別の一機が同様の攻撃へと展開するため、堂々巡りが繰り返された。

 「っ!らちが開かない。」

 セネスはいら立ち、機体を加速させて敵の真後ろにピタリとつく。自分の後方についた敵を無視しつつ、前方にFREE RANGEを放つ。しかし、後方支援により、外れてしまう。

 「ははは!、いいぞ。シェリー、カレン。例のポイントに到達する。作戦は第2段階だ。」

 全視点スクリーンに映し出される宇宙に、マサヤは、一部星の映らない黒い箇所を見つけた。そして、その空間は、徐々に広がり、吸い込むようにコックピット全体を覆っていったのだ。
 気づいた時は、3機ともそこへ飛び込んでいた。光が遮られたためか、モニタは近接する物体の輪郭を強調し始める。索敵にエラーを返すU.P-S。
 マサヤは、U.P-Sモードを視界確保へ切り替え、索敵は肉眼を使った。
 スクリーンに映し出させれる障害物とその距離・接近速度、これらの計器が目紛しく変化する中、それぞれの位置関係が球体のように表示されていき、L.E.O全体を覆う物体の存在に気づいた。
 マサヤは損傷を恐れ、速度を落としていった。

 「まずいぞ。このままでは、敵の思う壷だ。クズハ大尉とも逸れてしまったし…。」

 そういって、機体のバランサーをマニュアルで微調整する。各部のバーニアを小刻みに変え、機体を近接する物体より避けていったが、一部ぶつかり、闇の中で音が静かに響き渡る。

 「しまった!?。」

 すると、Syrinx後方より突如光が走り抜ける。エネルギー弾は、機体上方部を擦り、爆音と共に周囲の物体が破壊していく。後ろを振り向き敵を捜したが、降り掛かる物体の破片が襲いかかる。
 Syrinxは直ちに変形し、アフターファイヤを放つ。だが、これが仇となり、更なる多くの瓦礫が、機体を襲い始める。マサヤは、CLAWを機体側面に集中させ、加速旋回した。しかし事態は、瓦礫同様、崩れ始めた。再び全く別の方向から、攻撃を喰らう。

 「うわわぁぁぁ!!、どこだ!!。」

 その反動で、避けたはずの瓦礫に機体が直撃する。機体は、地面に突っ込む形で墜落していった。そして、辺りに大きな振動を連鎖させる。その連鎖が一部の物体を崩し、穴を作る。差し込んだ外の光は、Syrinxへのスポットライトのようだった。

 「やるな、カイン。新型はもらった、いい的だ!!。」
 「マサヤ!!。」

 シェリーが飛び出たときだった。ロイはシェリーを攻撃した。
 シェリーのL.E.O、Styx C1はねじるようにSyrinxの横を通り抜ける。そして、何かの物体に機体をこすりつけながら再び闇に隠れていった。
 辺りは、さらなる振動から物が崩れ、瓦礫のくだける音が響いた。
 ロイは、Rynexを物陰に隠しながら動きを止める。モニタで自分達を覆う物体全容を捉えようと、できる限り広角に分析し始めた。すると、巨大な空洞が、スクリーンに投影されるのだった。

 「まさかな…。」

 ヴィオス大戦前に、アクエリアは、自分達の宇宙ゲートとして巨大なコロニーを置いた。しかし、ヴィオスの戦火が、廃墟の都市へと変えていた。後に破棄されたわけだが、こうして、消えることも無く宇宙を彷徨っているのだった。

 「マサヤ!、聞こえたら返事をしろ!…ちっぃ。」
 「はは!Rynex、まるで亡霊だな!!落ちろっ!!。」

 動かぬRynexへ、すかさずカインの攻撃が降り注ぐ。マサヤ同様、敵の閃光と瓦礫の雨が機体を襲い始めた。

 「だめです、クズハ大尉も、マサヤとも通信がつながりません。」

 敵の位置とバフラヴィッシュの間に巨大なコロニーが立ちふさがったとき、艦長は航海長を怒鳴りつけ、ロイ達先発隊へ通信を試みていた。

 「まずいな前方の廃墟に閉じ込められたというわけか…こちらの主砲射程距離まで、後どれくらいか!?。」
 「後、10分はかかります。」

 座席の肘置きを強く握りしめた。

 「せめて、光が見えれば…。」

 たとえ主砲射程距離になったところで、味方にあたる可能性もあり、むやみに撃つことはできない。彼は歯を食いしばった。
 モニタに映る黒い物体をにらむつけるように見つめる艦長と船員達。格納庫では、発信プロセスが一時中止となり、ストール、ブライらは、じれてヘルメットを地面に叩き付けていた。

 「こちらセネス、聞こえるか!?ヴォルフ、返事をしろ!。」

 コロニーに閉じ込められたセネスも通信を試みていたが、全く通じないようだった。

 「だめか…この建造物は、すべてを遮断しているようだ。…敵は我々を散開させ、各個撃破に出たわけか…地味ではあるが、やるな。………だがな!。」

 セネスは、思い切った行動をとった。機体を加速させ、迫り狂う瓦礫の中に自ら飛び込んでいったのだ。

 「!?、一機じれて自殺を図ったかぞ……!!??。」
 「なんだ!?。」
 「!!。」

 カインとシェリー、カレンがセネスを捉えたとき、彼女の機体Vambraceは一瞬青く瞬いた。その機体は光の矢のように突き進み、瓦礫は機体にあたらず、むしろはじき返されていく。そして、放たれたエネルギー波が、瓦礫と共に自分達めがけて襲いかかった。
 あまりの一瞬の出来事に直撃を喰らい、カイン、カレンは弾き飛ばされる。シェリーは間一髪難を逃れ、セネスの後を追う。だが、コックピットにアラートが鳴り響いた。

 「そこまでだな!。」

 今度はロイの閃光が、彼女の機体を貫き、コロニーに巨大な穴を作った。
 その光は、バフラヴィッシュにも届いた。

 「光が見えました!。」
 「よし、全力で、敵の位置を探れ、ストール、ブライ聞こえるか!順次発進!!索敵班、今度はミスるなよお!。」

 ブライ達の支援が飛び込むより一瞬速く、一機の黒いL.E.Oが光の中に飛び込んだようだった。
 艦内に、ロイからの通信が入る。

 「こちら、クズハだ。バフラヴィッシュ聞こえるか!?。」
 「バフラヴィッシュだ、無事か!?。」

 ロイは、敵の位置について数点伝達する。艦長は、的確に主砲射撃位置を決定し、発射準備に入った。
 ロイは、続けて現状を報告する。

 「悪いニュースもある。マサヤと連絡がとれない。これから私は救助に向かう。後続は、コロニー外壁よりコロニーそのものを破壊してくれ。我々は脱出を試みる。以上だ。」
 「!、了解した。」

 この後、ひとつの通信がバフラヴィッシュにもたらされた。アクエリアとの交渉の為、ハミエル准将とロイの合流ポイントを指示してきたのだ。バフラヴィッシュの合流ポイントは変更されず、小型艇の要請が明記されていた。
 艦長は、頭を抱えながらも小型艇の準備を整備班に告げるのだった。

 「マサヤの救助が先だろ!、艦長は何を考えている!!。」

 格納庫で大声を上げるフランクがいた。後続の発進が落ち着くと、艦防衛のためのL.E.Oの整備をするのが、マサヤ救出への第一歩なのだが、出資者との会合準備をしなければならないことに怒鳴り散らした。
 作業に追われ、状況を理解できなかったエレンだったが、彼の声が耳に入ると、手に取っていた機材を不意に落としてしまうのだった。

 マサヤは、瓦礫に埋もれたSyrinxを動かそうと何度も試みていた。幸い機体に大きな損傷は無かった。揺すぶりをかけることで、重なりあった瓦礫が崩れ、脱出できそうだった。そのとき、上方を敵と思われる機体がかすめ、すぐ近くで墜落した。すべての無線をオープンにしていたSyrinxのコックピットは、爆音と乗っていたパイロットと思われる声が流れた。
 マサヤの体は、硬直した。

 「ザザザザザザ…くそ!ミスった…ザザ…ん………ザ…あれ…は…ザザ。」

 マサヤは、自分の心音が耳元で聞こえるようだった。恐怖と不安が彼を襲った。
 Syrinxのマスターキーを急いで抜き取り、コックピット外に出ようとしたが、遅かった。先ほど敵兵らしき人影が、マサヤに対し、ベーシック通信をしてきたのだ。

 「ザザザザ…この機体の…ザザ…パイロッ…ト!……聞こえるなら…ザザザ…手を上げて…出てこい。………ザザ…いるんだろ!?。」
 「まずい…。」

 彼の頭の中で、何かがデジャブするように重なり合う。無意識に足下のホルダーに固定してあった銃に手をおいたが、その手は、震えて動けなかった。

 「ちくしょう…。」

 口の中にたまったつばを飲み込み、必死で銃を手に取った。

 「ザザザザ……キーの解除くら…い…ザ………ザザ…簡単なのよ…。」

 不適に笑い、Syrinxに近づくのはシェリーだった。彼女の背には、燃え上がるL.E.Oの残骸、そして、ヘルメットのバイザーに映るのは、最新鋭のL.E.O。
 瓦礫に片足をあげ、銃を構え微笑んだとき、L.E.Oのコックピットハッチが開いた。
 咄嗟にシェリーは銃を放った。だが、パイロットのいない座席に銃痕だけが残り、飛び散ったその破片が、ほのかに宙を浮く。

 「なに!?。」

 彼女があっけにとられ、銃を引いたときだった、座席後ろに潜んでいたマサヤが、彼女めがけて銃を放ち、外に飛び出した。その弾は、近くの瓦礫に着弾し、火花を散らす。
 シェリーはその影の軸線上に銃口を向けた。マサヤは、瓦礫の影に隠れ、通信設定をいじりつつ声を上げる。

 「どうするつもりだ!!。」

 シェリーの耳元には、マサヤによるクリアな通信音声が届いた。

 「このL.E.Oを奪うのよ、当然でしょ?、おとなしく出てきなさい。命は助けてあげるわ。」
 「ふざけるな!。」

 シェリーは、マサヤの着弾を横目に、銃の腕を軽視した。
 マサヤは彼女の挑発に乗るようにまた飛び出し、シェリーに銃を放った。そして、転げながらSyrinx後方に飛び込んだ。シェリーは、落ち着いてゆっくりと歩き始める。
 耳元から、荒い息づかいと共に、再び声が聞こえる。

 「どうする…。」

 焦る息を無理矢理落ち着かせようと押さえ込む。

 「殺られるかよ!!。」

 マサヤは、パイロットスーツ越しに再び銃を握りしめる。小さな銃口は小さな音とともに固定された。
 シェリーは、話しながら銃の残弾数を確認し構え直す。

 「これは戦争よ、殺すか殺されるか。」
 「!違う!!。」

 シェリーが再び一歩前に出ようとしたときだった、マサヤが、銃を構えながら、力強く立ち塞がった。

 「GUARDIANS…あんた達は、どうして、そんな理屈で平気で殺し合いを続けるんだ!…本当にしなければならないことは、守るべき命を、守ることだ!!。」
 「戦いに理屈は無いわ!、戦うことが命を守ることなのよ!。」
 「邪魔者を殺すことが、命を守ることかよ!、戦わないですむ世界を考えたことがあるのならば、一度でもあるのならば、死なずにすんだ人は、たくさんいたはずだ!!!。」
 「ふっ、小賢しいことを!!。」

 マサヤの持つ引き金に力が入ったとき、シェリーもまた、銃をマサヤに固定した。

 「…!。」

 マサヤの弾は、はずれ、シェリーは、彼を貫いた。
 マサヤはその場で崩れ、手からこぼれた銃が地面より少し浮いた。シェリーは、マサヤに近寄るとその銃を蹴り飛ばし、彼の近くで見下ろすように目を向けた。

 「私だって…。…みんな死にたくないのよ…。」

 彼女に光がかざされる。マサヤを救出にきたロイのRynexだった。シェリーは、マサヤのライフパックと小型バーニアをSyrinxより奪取し、すぐその場を後にした。
 ロイは、Rynexを着地させると銃を片手にマサヤに駆け寄りった。

 「大尉…、すみません…。」
 「しゃべるな、体力を消耗するぞ。」

 ロイは、あたりを警戒しながら後続部隊と通信を交わし、マサヤをSyrinxに乗せた。
 時同じにして、バフラヴィッシュから主砲が放たれる。巨大なコロニーは、一気に崩れ始めた。そして、ヴォルフ、ブライらは、後に続くようにカインを追いつめていった。

 「っ、援軍か!…ダメージが大きすぎる!カレン、シェリーを収容したらすぐに離脱する。」

 2機のL.E.Oが、撤退していく。コロニーは完全に崩壊し、再び星が輝き始めた。ゆっくりと、閉じ込められていたすべての時が解放されるように、廃墟のコロニーは、消えていくのだった。

 「なんとかなったようだな………、…無事だといいがな。」

 セネスは、誰よりも最後にその場を後にした。
 マサヤを乗せたSyrinxは2機のRynex VMに牽引され、着艦した。

 「開くぞ!、退避!!。」

 フランクがSyrinxのハッチを強制開閉し、無重力の空間に飛び出るマサヤ。救護班が、彼を介抱にあたる。
 その横から、エレンが泣きながら飛び出した。そして、彼に抱きつくように声を発した。

 「ごめんなさい!!……っ、私…、わたし…。」

 幸いにも急所は外れていたが、銃弾は彼の腹部を貫通し血を多く出していた。危険な状態ではあったにもかかわらず、マサヤは精一杯無理をした。
 すぐ強引に、救護班は彼を連れてかれた。エレンは、マサヤに何かを言いかけたが、届きはしなかった。
 マサヤは、薄れる意識の中、先ほどの戦いで重なり合った物が、自分と彼女の逆の関係だったことを、もう一度思い出すのだった。

 「お帰りなさい、マサヤさん。」
 「マサヤ、これで5度目だな、お帰り。」
 「…そんな、俺…。」
 「いいんだ、みんな助かったんだからよ。」

 エレンはうれしそうに、涙を浮かべ微笑んでいた。そして、フランクは、マサヤに近づき拳を頭に擦り付けるのだった。
 マサヤは、胸が熱くなり、同時に、痛みも走った。自分が助かったこと、守るべき人々が助かったことに安心しつつ、銃撃を交わしたあのパイロットのことを思い出しからだ。

 「これで、よかったんだ…。でも、あのパイロットも…、死なずにすんだだろうか…。」

 ロイは格納庫にてすでに小型艇へハミエルと乗り込んでいた。セネスは、彼にそっと近づき、ささやいた。

 「無事で何よりだな。」
 「ああ。生き抜いてほしい…そう思う。」
 「それだけ?クズハ大尉、あんたはいつもそうやって……まあ、いいか。」

 隣にいたハミエルは、ロイとセネスのやりとりを聞きながら口を開いた。

 「大尉、彼を引き合いに出せなくなったな。さて、オルグにはどう話すつもりだ?」
 「代わりを連れてきた、というさ。」

 セネスはあきれて肩をすくめるのだった。

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