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創作物語 ThunderForce forever

第26話 ジーンの気配 - 憎しみが憎しみを呼ぶ -

 ロイ達の乗る小型艇が小惑星帯を離れたときだった。彼らは頭上から突如の攻撃を食らった。CLAW計は威嚇攻撃を行う2機のL.E.Oを捉えた。紺を基調としたL.E.Oは、GUARDIANSとすぐに理解できた。しかしそれは、カブトガニの容姿に包まれ、以前のL.E.Oとは似ても似つかない姿をしていた。
 彼等は、小型艇の周りを8の字に飛びかった。時には、不気味に動きをやめ、一定距離を保ってはあさっての方向に発砲した。
 小型艇には緊急時の簡素な装備しかなく、ただ敵弾に当たらないよう祈りながら逃げることしかできなかった。
 ロイは、急いでコックピットへ向かい、パイロットに既存CLAWの半分を防御にまわすよう言った。そして、救難信号打ち上げの指示を出した。信号は閃光弾である。頭上で光り輝く。
 彼は、映し出される情報を一通り理解すると、パイロットを落ち着かせ席に戻った。搭乗席では、自分のベルトを外し、今にも立ち上がろうとしているオルグがいた。ロイは、彼を押さえ込み、ベルトを確認した。

 「何を考えている、GUARDIANS!。」
 「来るとは思っていたが、こうも露骨に。クズハ大尉、どうする?。」
 「信号弾を上げたので、待機中のブライ中尉が気づいてくれるはずだ。それと…届くとは思わんが、バフラヴィッシュに救援を要請しよう。」

 さらに、現状の戦況から憶測し、暗殺はありえないことを付け加え、パニックを抑える努力をした。その最中、オルグが大声を上げた。小型艇の進路があらぬ方向に向いたのだ。さすがのハミエルも動揺が見えた。

 「バフラヴィッシュから遠のくぞ、いいのか?、大尉。」
 「かまわん。」

 その傍らで、セネスはヴォルフへ連絡を試みていた。

 「っ!、ヴォルフ応答しろ!、肝心なときに役に立たない、距離がありすぎるか!。」
 「君も落ちつてくれないと困る。」

 ロイは、苛立つセネスを横目に、見えぬもう一人の影を感じ取っていた。

 「しかし、この感覚。誰だ、誰が見ている…。」

 バフラヴィッシュと母艦ウィップラッシュは、共にアクエリアへ進路を取りつつ、ロイ達との合流ポイントに到着しようとしていた。
 会合にかかる時間は知らされていないため、彼等の帰還までバフラヴィッシュは、ここで待機することになっていた。行動を共にしたウィップラッシュは、ここでバフラヴィッシュから離れ、アクエリアへ旅路を急ぐところだった。
 ウィップラッシュから通信が入り、艦長同士は簡単な挨拶を交わす。二人の励まし合う声の間に、緊張がまぎれた。

 「微かではありますが、救難信号をキャッチしました。…信号は、クズハ大尉のものです。敵に攻撃を受けている模様!。」
 「なんだと!?。」

 その信号は、ウィップラッシュでも確認できた。お互い信号を補正し合い、救難信号を確信した。
 二隻は予定を変更し、船を信号の方向へ向けた。このポイントからでは距離ありすぎるため、L.E.Oはまだ出せなかった。
 艦長は、第一種戦闘配備を行い、マサヤ、ストールは各々の機体に乗り込んだ。

 「よし、Syrinxを先に出せ!、Rynexはいつでも出られるように!!。」
 「艦長!、Nix(ニックス)が、エレン・ヤツルギが出ようとしています!。」

 管制塔は、エレンを静止させようとしたが、エレンの通信がブリッジに届いた。

 「この機体なら、誰よりも速く救援に向かえます!。お願いします、発進許可を!。」

 エレンの訴えに、艦長は少し戸惑ったが、機体調整が完了している事を確認し、許可を出した。
 彼女との交信を終え、すぐにマサヤに切り替えた。

 「マサヤ。エレン・ヤツルギを頼む。以前の事もある。」
 「…、了解。」

 マサヤもエレンの判断を理解したのか、艦長の言葉を受け止め、彼女の出撃を了承した。

 「エレン・ヤツルギ。Nix、出ます!。」
 「マサヤ・キューベリック、Syrinx行きます!。」

 エレンのNixはカタパルトから加速し、星の海に消えた。Syrinxも同時に変形し、残像を残すのだった。

 ブライは、2機の新型L.E.Oに苦戦していた。Rynex-VMの装備では傷を与えられなかったからだ。ロイらも、小型艇に装備された少ない武器で攻撃を試みたが、敵機は、正面からそれらを受け止めても無傷で突進してくる。
 彼らは射程距離内に突入しても、発砲する事無く小型艇を横を過ぎ去っていく。彼らが横切るたびに、オルグは脅えて顔を伏せるが、またすぐ近くの窓を覗き込んでいる。ロイは、再びコックピットへ向かい、壁に設置された通信ヘッドセットを掴み、マイクを口に寄せた。

 「ブライ、クズハだ。我々の事は気にするな。少しの間、我々から注意を逸らしてくれればいい。」

 ブライは、小型艇から敵機を引き離そうとしたが、うまく事は進まなかった。指示しか出せない状況に、ロイは、少々苛立っていた。

 「クズハ大尉。もうすぐ大尉のおっしゃるポイントに到着します!。」
 「よし、到着後エンジン停止、CLAWの同調にまわせ。」

 パイロットらから反対の声が上がった。しかし、ロイに続いてコックピットの扉を開いたセネスによって押さえられた。彼女は、ロイの作戦を理解しようとしていた。

 「問題は、もう1機いる事だな…。」

 ロイは混乱の中、計器を見つめ、呟くのだった。
 ハミエルとオルグに順次状況を報告すると、彼はセネスと顔を合わせ、小さいため息をついた。状況をすぐに変えられるとは考えていないものの、敵の真意が掴めなかったからだ。
 Rynex-VMが1機のL.E.O後方を捕らえようとしていた。
 ブライの動きは、先ほどから同じ繰り返しだった。機体の最大速度で旋回し、カブトガニの後ろに食らいつこうとする。だが、すぐにもう1機のL.E.Oが彼を捕られ、彼は2機のL.E.Oに挟まれる形になる。そこで、ブライは、後方警戒が鳴りだす前に、急減速、左旋回から、後ろのカブトガニを取る策に切り替えた。
 彼の策は功を期し、笑みを浮かばせる。初めて照準がモニタに反射した。
 敵機を強く睨みつけ、TWIN-SHOTを放つが、弾は外れ2機とも照準モニタはもちろん、視界からも姿を消した。唖然とするブライ。
 敵機は小型艇とRynex-VMを見下ろしながら、通信パネルを開いていた。そして、もう一つの影に語り始めた。

 「ジーン大佐。こちらデニム。そろそろ、攻撃許可をお願いします。援軍が到着する前にダメージを与えておかないと。」
 「焦るなデニム。もっと引きつけてから行え。事が終わった後では意味が無い。ライルもだ。聞こえているか?。もう少し待て。」
 「了解。」

 ジーンは、2機のカブトガニにそう命令すると、再び沈黙した。

 闇の中から並ぶように現れ、ブライの後ろを取った。焦るブライの動きを知りつつ、Rynex-VMをロックオンする。

 「くそ!!!。」

 ブライは言葉を吐き捨て、CLAWの同調レベルを上げた。Rynex-VMは加速する。
 彼の詰まった胸にヒヤリとした空気が少し入ったときだった、出力を抑えたSEVERが着弾する鈍い音と振動が響いた。Rynex-VMの装甲は弾かれ、数本の光の線が、野菜の皮を削ぐように機体を露にしていく。火花が散り、Round-Dividerがもぎれる。コックピット内は、赤く染まり、ブライの身体は、震えが止まらなくなっていった。スロットを握る手は、もはや機能していない。
 ついに、機体は操縦不能となり、あらぬ方向へ転げるように落ちていく。2機のL.E.Oは、それを逃がす事無く消し去った。

 「!、ブライ中尉!!!。」

 後方から強力な粒子砲が、敵機を襲った。
 見慣れない1機は、小型艇の前で変形し、バックファイヤを見せ急停止する。Round-Dividerサイドの発射口から湾曲するレーザーを敵機に放った。
 敵機は、Rynex-VMのそれと違いを感じたのか、四散する。旋回する矢先にFREE-WAYが着弾する。

 「来たな!、Syrinx!。」

 デニムは、弾幕をジグザクに避けながら叫び、弾道方向へ機体を向ける。
 Syrinxは、小型艇をNixと挟むように静止した。

 「ハミエル准将、クズハ大尉、ご無事ですか!?」
 「大丈夫だ。マサヤ、もう1機は誰だ!?。」
 「エレン。エレン・ヤツルギです。」

 マサヤの声が、小型艇に到着する。直後、敵機の攻撃が降り注ぐ。彼は、CLAWを集中させると、Syrinxを変形させながら機体をのけぞらせ、背面で攻撃を弾き返した。そのまま、飛び出すように横切る敵機へ向かって突進した。
 2機のL.E.OともSyrinxが狙いだったようだ。

 「そうか、彼等の狙いはSyrinxか。エレン・ヤツルギ、私は、クズハだ。君は、我々の援護を頼む。CLAWをこちらと同調させ、これから送るポイントへ一緒に来てほしい。」

 エレンは、唇を震えさせながら返事を返すと、命令通りCLAWコントロールを始めた。

 「よくも、中尉を!。」

 マサヤは叫び、Syrinxは、高速形態で敵機を追尾する。

 「ライル、いつまでも、あのスピードに負けているわけにはいかないな。」
 「ああ、その通りだ。」

 敵機は、カブトガニの姿から急変し、鋭い加速から一気にSyrinxの後ろを取るのだった。

 「なにっ、変形するのか!?。」
 「はっ!、変形は、貴様だけのものじゃない。」
 「スピードは、Art-beq(アルト・バグ)の方が上のようだな。」

 Art-beqと名乗る2機の可変L.E.Oは、Syrinx後方から頭上をかすめるように接近すると再び、距離を開け後ろをとる。スピードの違いを見せつけられ、またしても、同じ作戦を取っていた。マサヤは彼等の動きを察し、前後左右のサブバーニアから急旋回、正面を向いて、カウンター攻撃を放った。
 だが、不適な笑いと共に、再びArt-beqは、前方を殻で覆うように変形する。BLADEは弾かれた。
 一気に間合いが縮まる。
 予想を超えた動きと高い防御力に、マサヤは息を飲み込んだ。彼らはそのまま突進してくる。
 身体は反応し、Syrinxは縦になると、2機の間を行った。ぎりぎりのところで尾翼が敵装甲と接触し、Syrinxは弾き飛ばされる。制御に焦るマサヤへ通信が入った。

 「クズハだ。マサヤ、敵機の目的はお前のようだ。1機では危険だ、CLAWを集中させ身を固め、脱出を考えろ。」

 マサヤは、暴れる機体を整え、悔しさ半分、指示に従った。
 敵機は勝ち誇ったように静止すると、Syrinxの後ろで笑う。

 「敵は、逃げようとしてますよ。ライル。」
 「しかしデニム、データ採取は十分にできたはずだ、深追いは禁物だ。ジーン大佐、如何致します?。」
 「そのようだな。だが、このLethe(レテ)のデータも必要だろう。今度は私に付き合ってもらうことにする。二人は、退路を確保しろ。」

 マサヤが小型艇との距離をつめた時だった。GUARDIANS色の紺をさらに深めた、宇宙にとけ込むような固まりがSyrinxとクロスした。彼は、CLAWで身を守ったが、新た敵機の動きに怒りが爆発した。
 スロットを握り直し、見えぬ敵機を追い始める。

 「戻れマサヤ!。」
 「もう1機いたのか!?。大尉、僕が引きつけますので、後退してください!。」

 その場を一気に離れるSyrinx。
 敵の新型L.E.Oは、先ほどのArt-beqをも超える速度で、Syrinxを誘う。時折LANCERを放って後方マサヤを牽制するが、狙ってはいなかった。
 敵は、圧倒的なパワーを持ちつつ、自分に後ろを取らせている。さらには威嚇しかしてこないのだ。マサヤは、この状況を理解しようとモニタに映る後ろ姿を睨んだ。自分もLANCERに呼応するようにBLADEを放ち、相殺させる。旋回時の半径を最小限に抑え、スピードを絞り出し、敵の内側を少し覗き込む。
 Letheと呼ばれる敵機は、ほんの少しの加速で、Syrinxを超えられた。彼は、Syrinxの射程距離外から、威嚇を繰り返しては、減速して煽ってみせた。

 「ついてくるか、なるほど。我が機のプロトタイプというだけはあるな。」
 「遊びをやってるつもりか!?。」

 マサヤは怒りを吐き捨てるが、敵の声が耳に残る。
 Letheは誘うように小惑星帯へ近づいていた。この空域は下手をすると暗唱地帯となる為、マサヤは、スロットを戻し、右旋回で回避した。当然、ジーンも急制動をかけ、彼の後を追う。2機は後方の取り合いながら、もつれ合うように飛び交った。方向が変わるたびに襲う強烈なG、これほど長期にわたり受け続ける戦いは、マサヤにとって始めてだった。免疫の無い神経と身体が、悲鳴を上げ始めた。
 ジーンは、暗唱区域直前で小惑星帯に突入し、前方視界に入った岩石群を破壊しながら進んだ。飛び散った細かい岩石が侵入経路をより複雑なものとした。マサヤも身体に鞭を打ち、後を追う。Syrinxは、襲い来る岩石を全てかわし、時にはCLAWで弾きながら進む。
 Letheは無駄の無い動きで、進路造り出す。Syrinxを追い込むシナリオだ。マサヤは、このシナリオを理解していたが、闘争本能と、どこか遠い記憶のデジャブが、彼を無理に追いつめていた。
 繰り返させるGのダメージに、恐怖が加わる。徐々に、SyrinxのCLAWが減衰し、粉砕された岩石が機体に直撃し始めた。集中を増さなければならないときに限って、焦りが増す。

 「この緊張感、久しい。Syrinxのパイロット、貴様の腕も、これまでの功績も認めよう。だがな、戦局はたった一機のL.E.Oでどうこうできるものではない。敵は一人じゃないんだ。」

 敵パイロットの言葉が、焦りに輪をかけた。聞き覚えのある台詞が過り、目の前が一瞬見えなくなる。空白が、死を招く。瞬時にBLADEを放ち、迫り来る巨大な岩石を砕いた。

 「この声…動き、まさか。」

 この言葉の後、Syrinxのモニタから敵は消え、U.P-Sのアラートと共に、真後ろに現れる。敵機は、Syrinxとの距離を、射程距離ぎりぎりのところで一定に保って会話を始めた。

 「だがな、Syrinx。過去のオーン大戦時ならまだしも、これは人類同士の戦い。自ら造り出したL.E.Oという兵器に恐怖する時代となった。正義を行使しているつもりだろうが、そうではない。貴様の存在は脅威となりつつある。これ以上、生かすわけにはいかない。」

 敵はトリガーに力がこめる。
 正面に、避けた岩石が飛来した。Syrinxが破壊した破片だった。マサヤは、岩石の影にSyrinxを潜ませ、通信パネルを開いた。

 「…ジーン…大佐。あなたは、ジーン大佐ですね!?。」

 ジーンは何も無い空間を睨み、感覚の目でSyrinxを探す。そして、予想外の応答に、言葉を詰まらせた。

 「私がわかるのか?。」
 「あなたに教わった兵士の一人です。僕は、大佐を、英雄を、尊敬していました。しかし、GUARDIANSは、許せない!。」

 意外な若い声に反応し、ジーンは苦笑した。

 「そうか。ならば、最後にもう一つ教えてやる。」

 ジーンは、皮肉めいた声で続けた。

 「この戦いは、殺戮を正当化する理屈と感情から始まっている。貴様のような下らん英雄気取りがいる限り、この戦争は終わらん。」

 彼の威圧する言葉とは裏腹に、機体へ確実にFREE-WAYが着弾する。Syrinxパイロットは動揺を見せていない。細かい岩石が降り注ぎ、ジーンは振りほどくように機体を脱出させると機体の速度を落とした。
 Syrinxからの声が届く。

 「英雄になろうなんて思っていない。ただ、オーンの討伐にGUARDIANSがしっかりしていれば…正しく力を使っていれば、惑星セイレーンはあんなことにならなかった。」

 ジーンは、舌打ちをした。CLAWを集中させ、Syrinxの索敵を続ける。

 「力で押さえ込む事が、新しい世界のためなんですか?。大佐、教えて下さい!。」

 この叫びを最後に、Syrinxが彼の正面に出現した。

 ジーンは、落ち着いて、照準モニタ中央に映るSyrinxを見つめて、言葉を交わす。

 「知ったようなことを言う。そうだ、一刻も早くこの戦争を終わらせ、本来の任務を遂行することが次の世界を作る第一歩だ!。そのためには、今の力が必要なのだ!。」
 「それは間違っている!。力を捨て、これからのことを考えるべきだ!。」

 お互いのCLAWが弾き合い、周囲の岩石をえぐりとる。Syrinxは制御が不安定になり、ほんの少し彼との軸がずれる。ジーンはその隙をわかっていたが、U.P-Sを静かにリセットする。

 「戦士はどんなときも、主君に忠を尽くし、戦わなければならない。貴様も戦士ならば、わかるはずだ。戦う事でしか表現できない愚かな自分を。オーン帝国との戦いに終止符を討った私にはわかる、お前達がやらなくてもこの戦いは始まっていた。そして、次に待つ未来も、戦場だ。」

 強力なエネルギーの閃光が繰り返し確認できた。いつの間にか小惑星帯を抜け、巨大な一つの岩石が現れた。アクエリア支部である。
 2機は、何も無いその空間に流れついた。

 ジーンとオンの退路確保に回ったデニムとライルだったが、全く動こうとしない敵の小型艇をモニタに固定すると、口を開いた。

 「あの船、あのままでいいのか?。ライル。」
 「ああ、あんな静止したところに元凶がいるわけだ。やらない方がおかしい。」

 そういうと、2機のArt-beqは持ち場を離れ、一気に小型艇に接近した。
 突如動き出した敵機にエレンは震えたが、Nixを敵侵入方向へ向けさせ、U.P-Sを確認する。敵機が自分をロックオンした知らせが鳴る。ロイの命により、ただ息の止め、迫り来る恐怖に我慢した。

 「終わりだ!!。」

 彼等がSEVERを撃とうとしたときだった。急に機体が鈍り、出力が低下した。完全に制御できなくなったとき、すべてが停止した。2人はそれぞれ反対方向へ漂うように止まるのだった。
 ロイは、機を逃さなかった。エレンに攻撃許可を、船の全速での突進を行った。
 Nixの弾幕と、強烈なCLAWアタックが2機を襲った。

 「この空域だけCLAW波が違うのか!?、まずい!!。」

 このポイントは、CLAW波長が突如として違うデッドポイントだった。何も知らずにここに来ると、彼等のように機体制御を失うのは必然だ。
 ロイは、CLAWの流れを感じ取り、同調に時間をかけていた。逆にそのエネルギーを利用して、船の前にCLAWを強化したのだ。

 「こんな船でも、これくらいのことはできるさ。」

 弾きとんだ2機は、しばらく再起動も侭ならず、下唇をかむのだった。
 エレンとロイ達は離脱に成功した。
 マサヤと交戦中のジーンに、雑音まじりのデニムの声が入る。

 「愚か者が!。」

 ジーンはマサヤに弾幕をはると、離脱した。
 緊張が残るマサヤだったが、くやしさよりも、安心感と脱力感が襲った。体の力が抜け、座席にもたれた。ゆっくりと頭上を回転する巨大なアクエリア支部。彼は、その光を見つめながら、ジーンの姿を思い出すのだった。
 気づくと、3機の見知らぬL.E.OがSyrinxを囲んでいた。彼等は、L.E.Oのカラーリングから、アクエリアから来たものと理解できた。
 マサヤは再びため息をつくと、通信パネルを開いた。

 「リサ・アルフォード以下3名、S.O.Lを支援致します。よろしくお願いします。」

 中立であるアクエリアは、またしてもS.O.Lに借りを作ったようだった。オルグは、受け入れを反対したが、メインパイロットの死に、艦内の動揺は隠せなかった。ハミエルとロイは、彼女と強い握手を交わし、手続きを取った。
 マサヤは、生還したエレンに、挨拶がてら軽く誉める。だが、決して彼女は笑顔を見せず、首を横に振ると無力さを語った。
 彼は一人、ロッカールームで着替えを済ませる。上着から折れ曲がったチョコバーがポケットから落ちた。ストールがそれを拾い渡すと、交わす言葉も無く、もう一度ポケットに入れた。
 マサヤは艦長へ報告を済ませ、ロイを探した。
 途中、立ち寄ったブリーフィングルームで、窓越しにもたれるロイを見つけ、そばに寄った。

 「大尉…、敵は、ジーン大佐でした…。」

 彼はロイにそう告げた。
 ロイは黙って、彼の言葉を聞いた。そして、うつむいたがすぐに顔を上げ、少し微笑んだ。

 「そうか…ジーンが。それは、私が倒さなければならない相手なのだろう。」

 マサヤにロイの真意は理解できなかった。
 窓の外は、肉眼で確認できる惑星アクエリアが見えた。誰もいないこの部屋で、厳しくそれを見つめるロイの眼に、マサヤは共感を覚えた。

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