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創作物語 ThunderForce forever

第29話 雷鳴(前編) - 消えていく命 -

 数隻のS.O.L艦隊が重力潮流を突破した。飛び出たその矛先は、目の前に配置されたGUARDIANS第一艦隊。そこに向け砲撃を開始する。GUARDIANSがいかに攻撃兵曹を多く保有しようとも、この予想し得ぬ奇襲に、ひとたまりも無かった。
 砲撃は、前衛に配置された艦をなぎ払い、GUARDIANS艦隊の動きを静止させた。次いで、S.O.Lは一気に潮流超えを行うのだった。

 「全艦、砲門開け!!。CLAW散布!。」

 ついに、GUARDIANSとS.O.Lとの決戦が切って開かれたのだ。
 オンは、戦力を向かい出たS.O.L艦隊へ集中させるべく、離れている第二、第三艦隊を集結させるようとする。そして、彼の一声で、ファフニールを筆頭に、GUARDIANS第一艦隊も一斉に砲撃を開始した。
 各艦隊から無数の砲撃が発射され、砲撃は空間を貫いていく。
 GUARDIANS、S.O.L共に、L.E.Oを出さず、艦隊戦を行う。だが、この飛び交う砲撃の中、後方からじっと見つめるだけの艦隊があった。それは、アクエリアからの艦隊だった。
 彼らは、互いの衝突を確認し、来るべき時のためにいた。
 GUARDIANS艦隊は、S.O.L艦隊との距離を取ろうと徐々に後退し始める。
 L.E.Oと違って巨大な炉心を抱えられる戦艦は、その一撃に、大量のエネルギーを含ませることが可能だった。しかし、その粒子はL.E.OのTHUNDER SWORD等とは違い、厳密なCLAWの増殖と高密度の圧縮ができなかった。そのため、戦場のCLAW展開によっては、意味をなさなかった。
 これは、戦艦の構造に問題があり、歴史的背景に起伏する。
 艦は、L.E.O戦が重視されていく中、大型兵器から、この小型戦闘機の大量輸送と、彼らの帰投すべき場所という役割へ変わっていったのだ。オーン軍の小型破壊兵器や超大型大量破壊兵器の前に、L.E.Oの母体である艦を目立たせるわけにはいかなくなった。そのため、艦の搭載兵曹は、簡略化され、緊急時のみ自己防衛手段としてのみ装備された。これにより、艦の内部空間は、L.E.Oを格納と補修の場に、ほぼ割り当てられていったのだ。
 また現在、ほぼすべての戦艦がこの理念に基づいているため、大型大量破壊兵器は、銀河連邦に存在しないといえる。ただ、オーン軍譲りのケルベロス・システムを除いては。
 このような戦艦とは名ばかりの移動母艦では、互いの牽制程度にしかならない火線と思えたのだが、S.O.Lは、GUARDIANS第一艦隊を次々と撃破し、今にも縦に引き裂こうしていた。

 「敵のCLAWが、中央に展開中!。」
 「敵、我が艦隊を分断しつつあります!。」

 ハミエルの放つ主砲が、GUARDIANS艦艇を貫通させ、巨大な爆破が、オンの目の前に広がった

 「何たることだ!?。」

 オンは、失態をこらえきれず、計器に拳を叩き付ける。GUARDIANS艦隊の砲撃は、S.O.Lの散布するCLAWの前に、ほとんど消し去られていた。
 彼はすぐにL.E.O戦に切り替える伝達を行う。それと同時に、CLAWの同調及び残存を防御へまわさせた。

 「敵は、CLAWを重力潮の中で拡散させ、突出することで、大きなうねりを造り出したのです。我々は、津波に飲み込まれたようなもの…。」

 フォンは、厳しい表情で説明する。オンも納得しており、艦隊がS.O.Lを中心に縦に引き裂かれる状況を悔しんだ。

 「敵は、我々を分散させ、第二、第三艦隊と合流する前に、各個撃破する作戦です。」
 「この状況を打開させる方法はいくつか存在する。しかし、我々とて、アクエリアを目指さねばならぬ。」

 艦隊を拡散させぬよう、オンは現状を維持し、防御に徹した。それでも、CLAWを掌握しつつあるS.O.Lの火線は、巨大な火柱のようだった。

 「しかし、愚かだハミエル。これでは、パネルへの絶対的有利さが消えたわけだ。アクエリアへは行かせん。ジーン大佐、行ってくれるか。」
 「了解です。」

 一歩後ろに身を引いていたジーンは、オンの命令を聞き、扉へと向かう。
 S.O.Lがアクエリア付近に展開し陣を取ることで、アクエリア降下は有利とされていたが、潮流を超えたため、ハンデが同じになったのだ。

 「そろそろ、GUARDIANSはL.E.O戦に移行するな…。だが、まず我々は、この艦隊を分断させる!。」

 ハミエルは状況を把握しながら、そう叫んだ。
 S.O.L全艦隊は、一斉に右旋回し、二つに分かれ始めた敵の第一艦隊右翼側に艦首を向け始める。S.O.Lの火線が、分かれた艦隊側面に直撃する。
 GUARDIANSは幸い、防御に徹したため、艦自体の被害は少なかったのだが、強力なエネルギーが、艦自体を、奥へ押し込んだ。

 「こちらも、緊急旋回!!。」
 「艦長!。だ、だめです!、目の前には!!。」
 「な!なにぃぃ!!。」

 それぞれの艦は、S.O.L艦隊へ向きを変えようとしたが、目の前に押し込まれた味方艦が接近し、互いが接触、誘爆していった。このCLAWの摩擦と放電が随所に見受けられ、重なり合うように艦が沈んでいくのだった。
 GUARDIANS各艦隊は混乱した。

 「落ち着け。取り乱した者が、死を急ぐのだ。L.E.O隊は、私に続け!。」

 ジーンはL.E.Oを出撃させた。各艦隊から彼に続き、次々とL.E.Oが飛び出す。しかし、押し寄せるCLAW波に巻き込まれ、自滅する光も見られた。
 S.O.L艦隊が、自分に後ろ見せたとき、フォンはS.O.Lが、自分達の位置とタイミングをどうやって正確に知り、奇襲を成功させたか納得した。そして、自分が予期した方向に進んでいく感覚を悔やんだ。
 ファフニールは、二つに分かれた第一艦隊、左翼側に位置していた。

 「S.O.LのL.E.Oが出るとき、二つに別れた部隊の内、我々を攻撃すると思われます。ですが、こちらのL.E.Oは温存しておくべきでしょう。」
 「そのようだな。敵は、あれがすべてではないのだろうな。なかなかやってくれる。」

 そういい、第二艦隊、第三艦隊の招集を、再び急がせる。
 ファフニールにいるL.E.Oのパイロット達は、戦いの混乱より、オンの次の言葉に緊張した。

 「L.E.Oが出た後も、第二、第三艦隊との合流が行われるまで、艦隊砲撃は続けるんだ!。」

 雑音まじりの伝令を聞き入れるカイン。

 「敵のCLAWに合わせ、敵の攻撃をかわしながら、味方の攻撃もかわすのか!?。はっ、ふざけやがって。」

 そう愚痴を飛ばすと、計器をチェックし、機体を加速させた。
 艦から飛び出したそのL.E.Oは、復帰したレナとアベルでカウンターフォースを組み、向きを変えたS.O.L艦隊後方へ向かった。

 バフラヴィッシュ内部全体が、砲撃の軋む低い音を響かせている。その格納庫では、L.E.Oの発進準備が進んでいた。そこは、活気に満ちあふれ、戦士達は、発進までの間、自分達の乗るL.E.Oで息を刻み、作戦を見守った。
 マサヤは、Syrinxのスロットを握りしめていた。時折深呼吸し、再びスロットを握る。そんな中、左足首付近に括り着けた小型ナイフが、赤く光ったように見えた。それに気を取られ、手を伸ばすと、ロッカールームでのセネスとの会話を思い出していた。
 中央パネルに刻まれた時刻が0を迎えた。いよいよ、L.E.Oの発進であり、彼らの作戦がスタートした。

 「ストール中隊、マサヤ中隊、発進スタンバイ。どうぞ。」

 ヘルメットに伝わる言葉が聞こえた。
 Syrinxは発進射出口へ向かう。ストールの機体、Rynexのフックが外れ、加速していくのが見える。

 「Rynex隊、行くぞ!。」

 ストールは、Rynex-VMのみで構成された編隊を指揮した。続いて、Syrinxのフックが外れる。

 「マサヤ・キューベリック。Syrinx出ます!。」

 マサヤは狭い空間から、一気に、広大な空間へ飛び出す。
 ふわりと浮く宇宙空間の酔いは、もうどこにもない。そこにひしめく艦と閃光。目前の光は、回転しながら過ぎ去っていく。自分の身体を囲い込むように映し出すコックピット・スクリーンには、敵をサーチする情報でいっぱいに埋め尽くされていた。
 座標をもう一度確認する。エレンが再調整したU-P.Sは、気持ちよく機能する。これだけの敵が、自分の中にあるのは初めてだった。
 彼に続き、2機のL.E.Oが飛ぶ。興奮を抑え、冷静さを取り戻すと、編隊の指揮を執り、正面の砲撃から背を向けた。S.O.L艦隊から飛び出したL.E.O隊は、オンとフォンの予想通り、分かれた第一艦隊の左翼、バフラヴィッシュ後方へ向かったのだ。
 マサヤ達は、カウンターフォースとの間合いが詰まったことを確認し、攻撃を順次開始した。
 ロイのいるセヴァッツァも動き出した。
 ロイは、ハミエルの横で、全体のL.E.Oの統率を行っていた。彼は、バフラヴィッシュの先陣を切るL.E.Oを見届ける。そして、後続の発進タイミングを見計らった。
 マサヤ達が敵のL.E.Oと接触したのを確認する。全艦に、Styx隊の発進を伝えた。そして、自分もL.E.Oに乗り込むべく、ハミエルの横を離れた。
 ヘルメットを抱えながらRynexに乗り込む。作業員と言葉を交わしながら、コックピット・ハッチを閉じる。敵の配置を再確認すると、ヘルメットをかぶった。
 スクリーンに機体状況が映し出される。右スクリーンに、セネスの声の波形が現れた。

 「私も付き合うよ。自分で蒔いた種は、自分で刈るつもりだ。」
 「君は君の『時』を生きてくれ…。」
 「つれないことをいうな、クズハ大尉。」

 セネスは、優しく笑い、ヴァンブレイスの陰に消えた。

 「クズハ・キュレイ、出るぞ。」

 白く見慣れた機体が多く飛び出す中、Rynexのフォルムは、独特な強さを誇っていた。加速するそのフォルムは、混乱する敵部隊をなぎ払う。
 そこへ、また新たな独特のフォルムが激突した。
 それは、ロイの前で瞬時に可変すると、青白い光を放って、RynexのCLAWを刺激した。強力なエネルギーは、広範囲に展開された。
 ロイは、その機体とすれ違うように交差する。

 「!、ジーンか。」

 ロイは、マサヤから聞いた機体を思い出しながら、ジーンの気配を感じ取った。機体を反転させると、後を追った。

 カインは、マサヤ中隊を囲い込むように包囲すると、カウンターフォースの力を見せつけた。その編隊は、Syrinxの動きを封じ、編隊を作るもう2機のStyxを、執拗なまでに追い込んだ。
 マサヤ達の空間が狭まっていき、部下の一人が錯乱し始める。

 「落ち着くんだ!。」

 マサヤは、精一杯声を出して、脱出口を探す。

 「我々を甘く見るな。Syrinxだけは、俺が刈る!!。」

 だが、その時だった。Syrinxを包囲するカインの飽くなき執着心が、彼に不幸を呼んだ。
 味方の砲撃が、彼を一瞬にして包み込んだのだ。後方から降り注ぐ艦隊の砲撃と飛び散るCLAWの光が、Syrinxに降り注ぐ。
 砕け散った機体の残像と空間に、マサヤは活路を見出した。Syrinxは、可変しながら飛び込んだ。残像がSyrinxの放つFREE-WAYとなり、レナとアベルの機体を直撃する。
 彼は、編隊を脱出させることに成功した。そして、その場を立ち去ると、GUARDIANS艦隊に飛びつく。艦の側面をぎりぎりに接近して、主要部分の攻撃、離脱を繰り返す。敵が彼を追撃したとき、後方の部下がそれを落としていった。
 マサヤは、さらに多くの艦を沈めるのだった。
 これらのS.O.Lの攻撃により、GUARDIANS第一艦隊は、徐々に数を少なくした。
 L.E.O戦においても、S.O.Lが戦火を上げる。それでもなお、オンは、戦力の温存と砲撃をやめなかった。
 マサヤ中隊が敵の防衛戦を突破したとき、後方から、S.O.LのStyx隊が突入した。その数は決して多くはなかったが、敵の主力部隊損失により、十分に渡り合えるものだった。
 このタイミングで、マサヤはストール中隊と合流した。どちらの部隊も、無傷で来られた。ほっと胸を撫で下ろす彼らに、隙ができた。
 作戦確認中だった。頭上から数本の光が走り、マサヤ中隊の2機が、消滅した。
 
 「アジル少尉!!。」
 「あれは、ArcAngel!。いや、機影は他にもある!?。」

 それは、遠くから急速に接近する物だった。部隊は散乱した。
 ストールは、別の機影を確認していた。これに、マサヤは、ブライを襲ったL.E.Oが過る。

 「ストール中尉、あれは危険です!!。」

 マサヤとストールは、弾けるように散開した。

 「また、会えたな!。Syrinx!。」
 「今度は、この前のようにならない!!。」

 二人の声がベーシック通信を通じてこだまする。マサヤは、聞き覚えのある声と消え去った部下を念い、怒りを露にする。

 「お前らのような奴がいるから、戦いが終わらないんだ!。」

 ストールは、自分の部隊をStyx隊の先頭へ向かわせ、マサヤに合図を送ると、二人は直角に跳ね上がった。
 各機体が交差すると共に、光の筋が湾曲し、四方へ飛び散っていく。それぞれが、旋回しうねりながら、ぶつかり合った。
 ストールは、Rynexの機敏性を利用し、ArcAngelに取りかかった。

 「ストール中尉は、ArcAngelか!、よし、俺は!。」

 Syrinxは、Art-beqの2機後方についた。
 マサヤが敵を追う最中、2機の機体は、急に1機となり、片方が、残像のように消えた。彼は目を疑ったが、次の着弾から、現実と理解せざる得なかった。
 彼は、着弾した方向へ索敵を行う。再び、U-P.Sが2機の機体を捉えるが、1機が消え、違った方向からの着弾でCLAWが弾けた。

 「くそ!、どうなってんだ!?。」

 ジーンの乗るLetheは、距離を取ってロイを引きつけた。
 全ての性能において当然LetheはRynexを上回っている。Rynexの放つBLADEも彼の前では、全く歯が立たない。装甲、防御においても、全く別物だった。CLAWを駆使してLetheの攻撃を防ぐロイだったが、むき出しとなりつつあった。
 そんなRynexでも、ロイには問題は無かった。彼は、Letheの楽しむような遊撃戦に誘われるまま、彼を敵主力艦隊から、遠ざけることにしたのだ。ジーンは、これに気づかず、ただ、Rynexと入り乱れる戦いに、酔いしれている。
 Letheは、さらにRynexを誘っていた。彼はRynexを操る者がロイとわかっていない。見えぬ意識が、彼を引きつけたのだろうか。
 ロイは、作戦タイミングを見計らってスロットを戻した。そして、飛び行く機体を見つめ、ゆっくりと目を閉じる。前方のスライサーより制動をかけると、反転してLetheに背中を見せた。

 「逃げるのか!?。」

 ジーンは、すぐにRynexの後ろを威嚇するように攻撃した。光束が、Rynexを襲う。
 しかし、ロイは、左右に機体を振るように動かしCLAWの残像を作った。エネルギーは、その筋を通り始める。Rynexはその時、身にまとったCLAWを解放する。Rynexを包んだエネルギーは、湾曲すると飛び散り、それを通って逆流し始めた。
 一瞬だった。ジーンのコックピット・スクリーンに光が溢れ出し、埋め尽くしたのだ。
 ロイはそれを確認すること無く、その場を後にする。

 「あのRynex…。まさかな。」

 ジーンは、何もいなくなった空間に言葉を漏らすと、見失いつつあった戦場を眺めた。

 ストールが、数機のArcAngelを破壊したところだった。Rynexに比べると、はるかに巨大なその機体は燃え上がり、飛ぶ意思を無くす。彼は、苦戦するマサヤに目を向けると、ArcAngelにジョイントされたL.E.Oが、それより分離することに気づかなかった。
 炎の中からL.E.Oが束となり、彼を奇襲した。
 ストールの機体は、後ろ半分が破壊され、制御を失いながら消えていく。

 「ストール中尉!!。」
 「次は、貴様の番だ。」

 マサヤは叫んだが、返る言葉無かった。
 Art-beqのデニムは、不気味な声で、マサヤを牽制した。だが、直後にロイの無線が重なる。

 「そうかな。」
 「!。」

 デニムがその声を聴いたとき、彼はその場より、大きく弾き飛ばされた。

 「作戦第二段階だ。戻れ、マサヤ。」
 「っく!。」

 迫る怒りを落ち着かせ、マサヤは、ロイと合流し弾幕を張ると離脱する。デニムは、態勢を整え、直ぐさま追撃したが、自分の艦から救援の声が上がったため、逃がすほか無かった。

 「っんあ!、任せられんのか!?。」

 それぞれの光が、それぞれに散り始める。空間は徐々に落ち着きを見せ始めた。
 ロイは、その状況を理解し、マサヤに指令を投げる。マサヤは、ストールとの作戦を失敗したが、S.O.Lの流れは、彼の戦果によりうまく機能していたのだ。

 「気にするな、お前のせいではない。ここは、彼女らとStyx隊に任せ、我々は次の段階へいく。」
 「は…、はい。ですが…、やるせないです…。あのL.E.O、なんとかしなければ…。」

 そんな、彼の心配に、ロイは、慰めの言葉を投げる。
 すると、セネスとヴォルフの機体が、Styx隊の先陣を切り、突入を指揮し始めた。

 ロイとマサヤは、バフラヴィッシュに一旦戻る。S.O.L艦隊は、引き裂いた敵艦隊右翼を、さらに押し込んでいた。
 そのとき、潮流付近に残留したアクエリアの艦から、大きな信号弾が打ち上げられた。

 「いよいよか。」
 「約束の時間丁度です。これで、GUARDIANSも動く!。」

 マサヤは、バフラヴィッシュから飛び立つエレンのNixと、アクエリアから来た支援部隊、エルとEJの真新しい機体を見た。彼は、それを見送るり、バフラヴィッシュ後方へ出陣した。
 ロイは、艦からフックで繋がったRynexの強化ブースターを切り離した。互いの座標位置を調整し、ドッキング態勢を取る。
 モニタをチェックし、位置を固定する。Rynexの各部スライサーが、何度か動くとブースターが機体後部に位置を固定した。2機は牽引ビームで結ばれる。

 「よし…。」

 RynexのC.C.S-unitが切り離され、ドッキングベイが剥き出しになる。ロイは、ブースターを機体に接続させ、機体状況を確認しつつ制御を切り替える。
 ブースターには、別途C.C.S-unitが装備されていた。そのパーツが青く光を灯すと、Rynexは新たな力を得て、強く加速した。
 エレンの部隊は、このタイミングを確認し、重力潮を乗り越えるため、加速した。
 アクエリアの光は、GUARDIANS側にも届いた。彼らも、その光に連動し、セネスと交戦中だったArt-beqの2機は、戦慄を離れた。

 「っ、逃がすか!。」

 セネスはそれを追った。
 バーンズとキャロルの乗るL.E.O「Albion(アルビオン)」が、惑星シュリンクスの重力カタパルトと、自ら取り付けたブースターによりGUARDIANS第二艦隊と接触したときだった。

 「光だ…。急がんとな、キャロル。」

 彼らもまた、戦況を理解した。艦から瞬時に離脱する。
 ブースターを切り離すと変形し、細く長い銃身が、黒く燃え上がった矢のように筋を作った。

 「あれは…!?。」

 Nixとの通信が不能になってから、しばらくしてだった。マサヤから、Albionが放つ黒い光の筋が見えた。彼は、GUARDIANSの別働隊が、アクエリアへ向かったと、不安と期待に捕われた。
 複雑な気持ちが過る。エレンは、ロイが降下するまでの揺動と防衛の役目を持った部隊だったのだ。彼女の乗るNix、アクエリアからの支援兵士の乗るL.E.Oは、Syrinxを元にしたプロトタイプ。それらの目新しい部隊が編隊を組み、アクエリアに向かう事で、敵の目を引きつけ、妨害を試みる作戦だった。
 しかし、マサヤは、敵が第二、第三艦隊と合流する前に、戦力を分散させるべく、再び艦隊に取り憑き、敵艦隊奥へ駒を進める状況にいた。そして、オンを乗せた戦艦ファフニール付近は、防御が厚く、苦戦を強いられていた。

 「あの艦には、誰が乗っているんだ…、防御が厚すぎる。」

 マサヤは隊を引き、バフラヴィッシュを通して作戦状況を確認する。情報では、GUARDIANS降下部隊が、彼女達と接触したようだった。作戦は成功だった。

 「…さっきの光、やはり気になる。少し早いが、こちらも次の段階に移行する。ヴォルフ中尉!、後、頼みます!。」

 彼は、そう連絡すると、変形し、重力潮へ向かった。嫌な予感がしたのか、重力に引かれるに連れて不安が増す。
 重力が奏でる巨大な光の筋は、大量のCLAW粒子が流れており、それらが、よじれるように異質な色を放っている。徐々に近づくにつれ、その大海原が襲いかかる。彼は、自然の力を前に圧巻した。だが、よく道を見つめ、突入を覚悟した。
 光の波は、自分の心奥底に眠る様々な想いと反響するように、前に進む事を拒んだ。うごめくエネルギーの束が、機体にまとわりつき推進力を押さえつける。
 マサヤは、その流れを受け止め、自然に機体を進める。すると、CLAWが自然と増加するよう感じられた。

 「行ける。」

 力を遮るものが、ほずれるように消えて行く。
 Syrinxは、この潮流を超え始める。進むに連れ、S.O.L艦隊が作り出したCLAW残像といくつもの穴のような渦が見えた。S.O.L艦隊が重力潮を超えるときにできた穴だった。アクエリアに向かったL.E.Oも、皆これを使ったのだ。例え出力の高いL.E.Oであっても、この重力潮を超える事は難しい。作戦で説明されていたものの、実際に広がる粒子の流れは、壮大であり、その穴だけが、唯一の道標であった。
 光がマサヤを包み始める。
 彼は、突入位置を固定すると、一気に突き進んだ。

 アクエリア軌道上をいくエレン達は、デニム、ライルによってかく乱されていた。

 「ここでケリをつけようじゃないか!。」
 「アクエリアへはいかせんよ!!。」

 二人の息はぴったり合っていた。デニムが防御形態のまま、見慣れぬL.E.Oに、機体をぶつけ痛めつける。そして、ライルが、そのふらついた機体に、火線を浴びさせるといった具合だ。
 彼らは、U-P.Sを錯乱させる機能を装備していた。U-P.Sは、現在のL.E.Oを司る基幹部分であるため、機能とは言えない。それは、L.E.Oを破壊する十分な兵器だった。

 「このっ!!。」

 リサが、機体を反転し、エレンをかばうように突撃したとき、その機能が働いた。空しく空を切る機体。腹を見せた瞬間、脆くもバラバラに四散する。
 耳元に、断末魔がこだまする。

 「っく!。この干渉能力、私が持ち込んだものか!!。」

 彼らを追ったセネスは、舌を打つ。エレンは、震えた。

 「ま、また…、なんで、みんな、私をかばうの…なんで…。」

 必死になって敵の攻撃をかいくぐった彼女だったが、自分をかばい、命を落としたパイロットに、堪えていた気持ちが爆発した。

 「いやああああああ!。」

 エレンの叫ぶ声が、デニムの機体に伝わり、デニムは、両方の頬を軽く緩め、舌先を歯で噛んだ。彼は甲高い声で笑いながら、Nixに突撃した。

 「行かせるか!!。」

 それを見たセネスが、Vambraceを敵に向ける。だが、機体制御が制限され、金縛りのように操作が乱れのだった。
 デニムは、Nixに接触した。CLAWが飛び散り、Nixが弾け飛ぶと、彼女の声が再び響く。彼は興奮し、さらに追いつめていく。エレンは彼らの不快な能力を理解したのか、機体制御のU-P.Sを切り離す賭けに出た。
 U-P.Sなしの飛行は自殺ものだったが、彼らの兵器から逃れるための苦肉の策とも言える。幸いにもデニムが彼女の後を追ってくる。彼を、セネスとEJから引き離すことができた。
 時折、バランスを崩しアクエリアの成層圏に近づいて行く。焦りと恐怖が彼女を追い込み始める。
 それを見たデニムは、ますます息を荒くした。

 「いいぞ!、逃げるなら逃げろ!、逃げてみろ!!、ハッーハッハッ!!。」

 後方の同友ライルは、EJの期待を軽々と撃破し、身動きの取れないセネスに照準を定める。

 「デニムめ、楽しみやがって…。俺は、こんな奴かよ!、死ねよ!。」
 「どっちが!。」

 Vambraceは、混乱を自己修復し、制御を逆手に取った。彼は、Reffiを知るはずがない。ライルは自分の能力を自分で味わう事になった。
 セネスがライルと衝突した時、Nixはすでに、左翼Round-Dividerが半壊していた。
 デニムは興奮を高め、機体を擦り擦りつける。それにより、Nixは、コックピット付近の装甲が捲り上がり、機能停止した。

 「最高だな。」

 デニムは満足げに、息を吐くと、全く動かなくなったNixと距離を取り、徐に、とどめの照準を定める。
 その時だった。彼の機体側面、剥き出しとなったエンジン部に、後方からの攻撃が直撃する。BLADEだ。

 「エレン!。」

 その声は、デニムに届いたのか、デニムは機体制御を失いかけるが、変形し殻で身をまとうと、後方からの攻撃を無視するように、Nixに突進して行った。

 「あいつ!?、やらせるか!!。」

 マサヤは死を覚悟し、彼女の横に機体をねじ込ませるよう突進した。

 「ハッハッ!!馬鹿め!、まとめて地獄に堕ちろ!!。」

 彼の声が甲高くSyrinxのコックピットに響いたように感じた。しかし、別の方角から、光が一点より瞬き、糸のような細い筋が空間を切り裂くように横切る。そして、突撃してくるArt-beqを貫通させた。その機体は、装甲が融解し剥がれ落ちていった。
 三人は、何が起きたか理解できなかった。
 Art-beqは、ヨロヨロとSyrinxの前を通り過ぎて行く。そのままアクエリアの重力に引き込まれ始めていった。

 「ああああぁ!!、いったい…、いったい何が…なんだってんだ!!。まだ!!、死にたくない!、まだ、死にたくない!!!。俺は!!。」

 デニムの声はマサヤのコックピットに流れる。そして、重力が加速し、火花を散らしながら大気に包まれていく。声も、雑音とともに燃え尽きていくのだった。
 マサヤは、我に帰るように息を飲んだ。
 そんな光景を、ずっと後方より眺めていた者がいた。バーンズだ。

 「っかぁー、ちくしょう。外れやがった。まとめて片付けるチャンスがよぉ。…ま、いっか。今のうちだな、キャロル。」
 「あなた、相変わらずね、味方ごと攻撃するなんて…。」
 「あぁ、俺の知ったこっちゃねぇしな。が、肝心のを外しちまって、大目玉かね。」

 そう言うと、笑いながら、片目をつぶる。キャロルは、彼が意図的に外したことを知った。そして、寂しげに彼の横顔を見つめるのだった。
 バーンズは、アクエリアへ降下を開始した。

 「エレン!、早く脱出するんだ!、このままじゃ!。」
 「だ…脱出装置が、動かないん…もう、私なんか放っておいて…お願い…。」

 彼女は何かを悟ったように静かな声で答える。コックピット・ハッチが変形していたため、脱出装置が機能しなかったのだ。鉄屑と成り果てたNixは、大気圏に落下しようとしていた。
 マサヤは、その霞んだ言葉にいつもの強気な彼女が感じられなかった。それは同時に、消えていく大切な何かに変わっていく瞬間だった。気づくと、彼はコックピットの非常ボックスから命綱を身体に取り付けて飛び出した。
 腹部に取り付けられたバーニアから小さな推進力を得て、Nixに向かう。

 「もういい!、来ないで!!、このままでは、マサヤさんまで!!。」
 「馬鹿やろう!、そんなの絶対にだめだ!!。」

 彼女は、涙声で叫ぶ。
 Nix機体のコックピット付近は、火花が飛び散り、一部内部が露出している。そこから、マサヤの目に彼女が入った。

 「私のせいで…また、私のせいで…、いやああああ!。」

 エレンは、一気に過去の恐怖がよみがえり、何もかもが自分の意志を破壊し始める。そのときだった。

 「そんなことさせるか!!。」

 マサヤは叫び、もどかしく進む宇宙の中で精一杯手を伸ばし、彼女の目に映る。今まで望んでいても決して叶うことも、自分が叶えることもできなかった想いが全身を駆け巡る。いつの間にか過呼吸に成りかけた息が止まっていた。

 「…私は…。」

 彼女は大声で泣きながら、壊れた隙間からちぎれるくらい手を伸ばした。
 すべての視野にアクエリアの大気が広がる。彼の身体は、ゆっくり回転しながら近づいて行く。なにもかもが無音となっていった。
 大切な何かを求め合い、異なる気持ちが絡まるように二人の手が、今、繋がった。

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